終身保険はおすすめしない|共働き子育て世帯にいらない3つの理由と例外

「終身保険なら掛け捨てじゃないので、もったいなくないですよ」
子どもが生まれたとき、死亡保険を検討しているとき。こんな言葉とセットで終身保険を勧められた方は多いのではないでしょうか。
一生涯の保障がついて、解約すればお金も戻ってくる。話だけ聞くと、掛け捨ての保険より良さそうに見えます。
でも、毎月1〜2万円台の保険料を数十年払い続ける価値が本当にあるのか。
ここで一度立ち止まれるかどうかで、生涯の保険料は数十万〜数百万円変わります。
この記事では、共働き子育て世帯に終身保険をおすすめしない理由を商品の構造から分解します。
保険代理店で11年間、1,000世帯以上の相談を受けてきた経験がベースです。
実は私自身、終身保険で「積立」をしていた時期があります。
その経験も含めて、判断軸をお渡しします。
終身保険とは|「一生涯の保障」と「積立」の組み合わせ商品

終身保険は、死亡保障が一生涯続く保険です。
何歳で亡くなっても保険金が支払われ、途中で解約すると「解約返戻金」が戻ってきます。
解約返戻金とは、支払った保険料の一部が積み立てられ、解約時に払い戻されるお金のことです。
つまり終身保険の中身は、2つの機能の組み合わせです。

- 保障部分:亡くなったときに保険金を支払う機能
- 積立部分:保険料の一部を貯めて、解約時に解約返戻金として返す機能
掛け捨ての定期保険と比べて保険料が高いのは、この積立部分が上乗せされているからです。
「貯まる保険」はお得なのではなく、貯める分を先に多く払っているのが構造の実態です。
もうひとつ押さえたいのが、子育て世帯向けに販売される終身保険で主流の「低解約返戻金型」です。
低解約返戻金型とは、払込期間中の解約返戻金を通常の終身保険の70%程度に抑える代わりに、毎月の保険料を割安にしたタイプです。
払込が終わると返戻率が上がる設計のため、「学資保険代わりに」という形でよく販売されています。
ただし裏を返すと、払込期間中に解約した場合は支払った保険料を下回る金額しか戻らない設計だということです。
この特徴が、後ほどお伝えする「おすすめしない理由」の3つ目に直結します。
「掛け捨てはもったいない」は本当か|相談で最も多い2つの誤解

「掛け捨てはもったいないですよね?」
1,000世帯以上の相談の中で、終身保険まわりで最も多く聞いた言葉です。
次に多いのが「終身なら、いつか必ず家族がお金をもらえるんですよね」でした。
どちらも気持ちはよく分かります。
ただ商品の構造から見ると、この2つには誤解が含まれています。
誤解①「掛け捨てはもったいない」の正体
掛け捨ての保険料は、まるごと「保障を買う代金」です。
戻ってこない代わりに、同じ保障額なら保険料は終身保険の数分の一で済みます。
一方の終身保険は、保険料の多くが積立部分に回っています。
戻ってくるお金は「増えたお金」ではなく「自分が多めに払ったお金」です。

掛け捨てはもったいないのではなく、掛け捨てだから保障のコストパフォーマンスが良い。
これが構造から見た実態です。
誤解②「終身ならいつか必ずもらえるからお得」の正体
たしかに終身保険は、いつ亡くなっても保険金が出ます。
ただ、人がいつか亡くなることは保険会社も当然知っています。
つまり、いつか支払いが発生することを前提に保険料が計算されています。
「当たれば得」の構造ではなく、長生きするほど払込総額が保険金額に近づいていく、貯蓄に近い構造です。
次の章で、その値段を実際に分解します。
共働き子育て世帯に終身保険をおすすめしない3つの理由

結論からお伝えします。
共働き子育て世帯にとって、終身保険の優先度は低いと考えています。
理由は3つです。
- 必要な保障の大半は「期間限定」なのに、一生涯分の値段を払うことになる
- 積立部分の効率が、預金やNISAと比べて見劣りしやすい
- 解約返戻金が「人質」になり、見直しの自由度が低い
理由①:必要な保障の大半は「期間限定」
子育て世帯に大きな死亡保障が必要なのは、子どもが独立するまでの期間です。
子どもが成長するにつれて、残りの教育費と生活費は減っていきます。
つまり必要な保障額は、年々小さくなっていく「右肩下がりの三角形」です。

一方、終身保険の保障は一生涯一定の「四角形」です。
三角形の保障が必要な時期に四角形の商品で備えると、保障が足りないか保険料が過大になるかのどちらかになりやすいのです。
しかも共働き世帯は、遺族年金と団信(住宅ローンの団体信用生命保険)ですでにかなりの部分がカバーされています。
残った分だけを、必要な期間だけ持つのが効率的です。
必要保障額の出し方は【必要保障額の計算方法|共働きが”引き算”で出す死亡保険の目安】で詳しく解説しています。

理由②:積立部分の効率が見劣りしやすい
同じ保障額で、保険料はどれくらい違うのでしょうか。
30歳男性・死亡保障1,000万円の目安で比べます。
| 種類 | 月額保険料の目安 | 60歳までの払込総額の目安 |
|---|---|---|
| 低解約返戻金型終身保険(60歳払済) | 約19,000〜22,000円 | 約680万〜790万円 |
| 定期保険(60歳満期) | 約2,000〜3,000円 | 約70万〜110万円 |
| 収入保障保険(60歳まで・月10万円受取) | 約1,500〜2,500円 | 約50万〜90万円 |
※30歳男性の一般的な水準の目安です。実際の保険料は商品・健康状態・喫煙の有無で変わります。収入保障保険は受取総額が年々減る仕組みのため、単純な横並び比較はできません。
収入保障保険とは、遺族が毎月分割で保険金を受け取るタイプの掛け捨て保険です。
終身保険との月の差額は、およそ1万5,000〜2万円。
この差額を自分で積み立てた場合と、終身保険の積立部分を比べるとどうなるでしょうか。
| 準備方法 | リスク水準 | 30年後の目安(積立総額に対する割合) |
|---|---|---|
| 低解約返戻金型終身保険(払込満了直後の返戻率) | 低 | 約100〜110% |
| 個人向け国債(年0.8%想定) | 低 | 約112% |
| NISA・債券中心(年3%想定) | 中 | 約160% |
| NISA・株式中心(年6%想定) | 高 | 約280% |
※毎月同額を30年間積み立てた場合の概算です。NISAの数字は想定利回りによる試算で、運用成果を保証するものではありません。
同じ低リスク同士で比べても、保険の積立部分は個人向け国債に届くかどうかの水準です。
その差が、保障機能のコストと保険会社の経費の分です。
理由③:解約返戻金が「人質」になる
3つ目が、相談現場で一番重いと感じた理由です。
低解約返戻金型の場合、払込期間中の返戻率は70%程度です。
例えば300万円を払い込んだ時点で解約すると、戻るのは210万円ほど。

そして人生には、解約を考える場面が普通に訪れます。
収入の変化・転職・離婚など、家計の前提が変わる場面です。
そのたびに「今やめると数十万円損する」という事実が、見直しの足を止めます。
保険が家計に合わなくなっているのに、やめられない。
この状態を、私は相談の中で何度も見てきました。
掛け捨てなら、いつやめても失うのは翌月以降の保険料だけです。
家計の変化に合わせて身軽に見直せること自体が、掛け捨ての大きな価値です。
掛け捨て側で収入保障と定期のどちらを選ぶかは【収入保障保険と定期保険の違い|どっちを選ぶ?共働きの判断軸3つ】で解説しています。

私も終身保険で「積立」をしていました

ここまで構造の話をしてきましたが、実は私自身、終身保険で積立をしていた当事者です。
第一子が生まれたとき、教育費の準備として最初に検討したのが終身保険でした。
学資保険も比べましたが、積立の仕組みとして見ると学資保険と終身保険に大きな違いはありません。
それなら受け取り時期の自由度が高い終身保険で、と考えたのです。
ただ当時、円建て終身保険の利率はかなり低い水準でした。
そこで利率の高かった米ドル建ての終身保険を選びました。
教育費は外貨建て終身保険で積立、死亡保障は収入保障保険でカバー、という組み合わせです。
業界の内側にいて、コストの構造も知ったうえでの判断です。
当時は、それが合理的だと思っていました。
考えが変わったのは、旧つみたてNISAを数年運用してからです。
保障と運用は分けて、運用は低コストの投資信託でやったほうが効率的だと確信しました。
元本割れを承知で解約し、約2年半の実質の損失は約21万円でした。
このあたりの経緯は【外貨建て終身保険のデメリット|業界11年が手数料とNISA比較で分解】で詳しく書いています。

この経験から言えるのは、業界人でも「保険で貯める」の引力からは逃れにくいということです。
数字を覚えていただく必要はありません。
考え方として「保障は掛け捨てで、積立は預金とNISAで」だけ持ち帰ってもらえれば十分です。

遠回りした本人だからこそ、最初から分けることをおすすめしています。
それでも終身保険が選択肢になる3つのケース

ここまでおすすめしない理由を並べてきましたが、終身保険が選択肢になるケースもあります。
全否定ではなく、条件の話です。
ケース①:相続税がかかる世帯の対策
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
受取人固有の財産として、遺産分割協議を経ずに受け取れる特徴もあります。
相続税の課税対象になる世帯では、終身保険が有効に働く場面があります。
ただし現場の実態として、相続対策で活用される終身保険のほとんどは一時払いタイプでした。
一時払いとは、まとまった資金を契約時に一括で払い込む方式のことです。
月払いでコツコツ積み立てるタイプとは、目的も使い方も別物です。
「相続対策になるから」という理由で月払いの終身保険を勧められたら、前提を確認してください。
そもそも相続税には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、多くの子育て世帯は課税対象になりません。
ケース②:葬儀費用を確実に残したい人
葬儀費用として200〜300万円ほどを、使い込む心配なく家族に残したい。
この目的なら、小口の終身保険に意味はあります。
ただ、その金額を貯蓄で確保できるなら保険を経由する必要はありません。
「貯蓄で持てるか」を先に確認するのが順番です。
ケース③:どうしても貯蓄が続かない人
強制的に引き落とされる仕組みがないと貯められない方には、終身保険の「やめにくさ」が逆に機能する場合があります。
とはいえ、強制積立だけが目的なら銀行の自動積立やNISAの自動引き落としでも同じ仕組みは作れます。
コストの低い手段から先に試すことをおすすめします。
迷ったら、次の順で確認してください。

すでに終身保険に加入している人へ

「今入っている終身保険、すぐ解約したほうがいい?」
ここは慎重に進めてください。
すぐに解約するのはおすすめしません。
理由は2つあります。
払込期間中の解約は元本割れすること。
そして一度解約すると、健康状態によっては同じ保障に入り直せない場合があることです。
判断の材料は3つです。
- 残りの払込年数と、現時点の解約返戻率
- 加入した目的(教育費・死亡保障)が今も有効か
- 解約後の保障を、掛け捨て+貯蓄で組み直せるか
私自身も、解約までに半年ほど検討しました。
急ぐ必要はありません。
自分で判断軸を整理したうえで最後の確認をしたい方は、【無料保険相談を上手に使う方法】も参考にしてください。

よくある質問

学資保険代わりの低解約返戻金型終身保険はありですか?
積立の仕組みとしては学資保険とよく似ていて、どちらも低リスク・低リターンの商品です。
教育費準備の手段としては、預金やNISAと並べてリスク水準ごとに比べることをおすすめします。
詳しくは【学資保険とNISAどっち?共働き世帯の教育費準備の判断軸】をご覧ください。

生命保険料控除があるからお得ではないですか?
終身保険が対象になる一般生命保険料控除は、所得税で年間最大4万円・住民税で最大2万8,000円の所得控除です。
軽くなる税金は所得税と住民税を合わせて年1万円に届かないケースが多く、保険料の差を埋めるほどの効果は期待しにくい水準です。
資産形成の税制優遇を求めるなら、非課税で運用できる枠が大きいNISA・iDeCoが先です。
独身でも終身保険は不要ですか?
扶養する家族がいなければ、大きな死亡保障そのものの必要性が低くなります。
葬儀費用程度であれば、貯蓄での準備を先に検討してください。
途中でやめたら今まで払った分が無駄になりませんか?
払った保険料のうち保障部分は「守られていた期間の代金」で、無駄ではありません。
積立部分の元本割れと、これから払い続ける場合の非効率のどちらが大きいかで比べます。
過去に払った金額ではなく、これからの損得で判断するのがコツです。
終身保険と同じように「保障」と「積立」を組み合わせた商品は、ほかにもあります。学資保険・変額保険・個人年金保険も、同じ視点で構造を分解しています。
学資保険については【学資保険はおすすめしない?業界11年が伝える4つの理由と代替案】で詳しく解説しています。

変額保険については【変額保険はやめたほうがいい?業界11年がコストとNISA比較で分解】で分解しています。

個人年金保険については【個人年金保険はいらない?iDeCo・NISAと比べた判断軸|業界11年】で判断軸を整理しています。

終身保険の代わりに検討したい収入保障保険は、【収入保障保険の選び方|共働き世帯が迷わない月額・期間の決め方5選】で選び方を解説しています。

まとめ|保障は掛け捨てで、積立は分けて

終身保険は「悪い商品」ではありません。
ただ、保障と積立の組み合わせ商品である以上、構造的にコストが上乗せされます。
共働き子育て世帯に必要なのは、子どもが独立するまでの期間限定の保障です。
そこは収入保障保険や定期保険で効率的に持ち、積立は預金とNISAで分ける。
このシンプルな形が、多くの世帯に合うと考えています。

同じ保障でも、この判断ができるかどうかで生涯の保険料は数十万〜数百万円変わります。
我が家に必要な保障額から順番に決めたい方は、【保険の選び方ロードマップ|共働き家族が我が家に必要な保険を自分で決める順番】からどうぞ。

考えるための知識は、このブログに1記事ずつ詰め込んでいきます。一緒に、納得できる保険選びをしていきましょう。

