傷病手当金・障害年金はいくら?月収別の金額と受給の流れ

家族のことを考えて、死亡保険は検討した。
でも「長く働けなくなったとき」の備えは、考えたことがない——。
もしそうだとしても、珍しいことではありません。
保険代理店で11年間、1,000世帯以上の相談を受けてきましたが、働けなくなったときの備えを自分から検討しに来る方は、ほとんどいませんでした。
こちらから「もし長く働けなくなったら、と考えたことはありますか?」と投げかけて、初めて返ってくる言葉はだいたい決まっています。
「そういう保険もあるんですね」
「働けなくなること、考えていませんでした」
入院や死亡と違って、「長く働けない」という状態は、身近に経験した人が少なく、イメージが湧きにくいのだと思います。
ただ、イメージできないままにしておくと、備えの判断そのものができません。
実は、会社員なら給料の約3分の2が最長1年6ヶ月受け取れる制度があり、その先も障害年金という支えが続きます。
この金額を知っているかどうかで就業不能保険や医療保険の入り方が変わり、生涯の保険料が数十万〜数百万円変わることもあります。
この記事では、傷病手当金と障害年金が「あなたの月収だといくら出るのか」を、早見表とモデルケースで確認できるようにしました。
読み終わる頃には、働けなくなったときの収入の全体像がつかめて、保険で備えるべき「残り」が見える状態になります。
働けなくなったとき、お金は2段階で出る

「長く働けない」を想像し始めると、今度は収入がゼロになる不安が一気に膨らむかもしれません。
でも、先に全体像をお伝えすると、会社員・公務員の場合、収入はいきなりゼロにはなりません。
「傷病手当金→障害年金」の2段階で、公的な支えが続きます。

流れを時系列で見るとこうなります。
まず、働けなくなった直後は、有給休暇や会社の制度でしのぐ期間があります。
有給を使い切っても働けない場合、健康保険から「傷病手当金」が支給されます。
金額は給料の約3分の2で、期間は通算1年6ヶ月までです。
そして、働けない状態が1年6ヶ月を超えて続く場合、今度は「障害年金」の対象になります。
その病気やケガで初めて病院にかかった日(初診日)から1年6ヶ月が経った日を「障害認定日」といい、ここから障害年金の請求ができるようになります。

まずは「2段階ある」ことだけ覚えてください。金額はこの後、あなたの月収ベースで確認していきます。
つまり、保険を考えるうえで大事なのは「働けなくなったらいくら不足するか」であって、「収入が全部なくなる前提」で保険に入る必要はないということです。
それぞれの段階でいくら出るのか、順番に見ていきましょう。
傷病手当金はいくら?月収別の目安

計算式はシンプル「給料の約3分の2」
傷病手当金の1日あたりの金額は、次の式で計算されます。
支給開始日以前12ヶ月の標準報酬月額の平均÷30日×3分の2
「標準報酬月額」とは、社会保険料を計算するための給与の区分額のことで、おおまかには月収(額面)と近い金額です。
細かい式に見えますが、ざっくり言えば「月収の約3分の2が毎月入ってくる」イメージで大丈夫です。

月収別早見表
月収別に、1日あたりと1ヶ月あたりの目安をまとめました。
| 月収(額面) | 1日あたりの目安 | 1ヶ月あたりの目安 |
|---|---|---|
| 25万円 | 約5,550円 | 約16.7万円 |
| 30万円 | 約6,670円 | 約20万円 |
| 35万円 | 約7,780円 | 約23.3万円 |
| 40万円 | 約8,890円 | 約26.7万円 |
| 45万円 | 約10,000円 | 約30万円 |
| 50万円 | 約11,110円 | 約33.3万円 |
※実際は標準報酬月額の等級で計算されるため、多少前後します。
受け取る条件は「連続3日休み」と「通算1年6ヶ月」
支給の条件と期間のポイントは3つです。
- 連続して3日休んだ後、4日目以降の休んだ日から支給される(最初の3日=待期)
- 支給期間は「支給開始から通算1年6ヶ月」
- 途中で復職した期間は支給期間にカウントされない
最初の3日間を「待期」といい、有給休暇や土日を含めて連続3日で成立します。
「通算1年6ヶ月」は、2022年1月からの新しい数え方です。
以前は「開始から1年6ヶ月経ったら終了」でしたが、復職した期間を数えない通算方式に変わり、体調に波がある病気でも支給日数を使い切るまで受け取れるようになっています。
自営業・フリーランス・扶養内パートは対象外
ここは大事な注意点です。
傷病手当金は健康保険(会社員・公務員が入る保険)の制度で、自営業やフリーランスの方が入る国民健康保険には、原則この制度がありません。
また、配偶者の扶養に入っているパートの方も、自分自身が健康保険の被保険者ではないため対象外です。
| 働き方 | 傷病手当金 |
|---|---|
| 会社員 | 対象 |
| 公務員 | 対象(共済から同様の給付) |
| 自営業・フリーランス | 原則なし(国民健康保険) |
| 扶養内パート | 対象外(自身が被保険者でないため) |
働き方によって、働けなくなったときの公的な土台はまったく違います。
自営業・フリーランスの方は、この記事の金額を「会社員の場合」の目安として読みつつ、貯蓄と保険で備える割合を厚めに考える必要があります。
障害年金はいくら?等級と家族構成で変わる

障害年金は「2階建て」
傷病手当金が終わった後の支えが障害年金です。
障害年金は、家の構造にたとえると2階建てになっています。

1階部分が「障害基礎年金」で、国民年金に入っている人すべてが対象です。
2階部分が「障害厚生年金」で、初診日に会社員・公務員だった人に上乗せされます。
つまり、会社員なら1階と2階の両方を受け取れる場合があります。
自営業・フリーランスの方は、1階部分のみです。
障害基礎年金の金額(2026年度)
1階部分の金額は、等級と子どもの人数で決まります。
| 区分 | 年額 | 月額の目安 |
|---|---|---|
| 1級 | 1,059,125円 | 約8.8万円 |
| 2級 | 847,300円 | 約7.1万円 |
| 子の加算(第1子・第2子) | 各243,800円 | 各約2万円 |
| 子の加算(第3子以降) | 各81,300円 | 各約6,800円 |
子の加算は、18歳になった年度末までの子どもが対象です。
共働き子育て世帯なら、この加算がしっかり乗ってきます。
障害厚生年金の上乗せ
2階部分の障害厚生年金は、これまでの給与水準(賞与込み)と加入期間で計算される「報酬比例」の年金です。
給与が高いほど、加入期間が長いほど増える仕組みです。
さらに、生計を共にする65歳未満の配偶者がいる場合は「配偶者加給年金」として年243,800円が加算されます(1級・2級の場合・配偶者の年収850万円未満などの要件あり)。
なお、2階部分には1級・2級より軽い「3級」もあります。
3級は障害厚生年金のみで、報酬比例部分だけの支給になります(最低保障は年635,500円)。
1級に認定された場合は、報酬比例部分が2級の1.25倍になります。
等級ごとの組み合わせを整理すると、次のようになります。
| 等級 | 1階:障害基礎年金 | 2階:障害厚生年金 | 配偶者加給年金 |
|---|---|---|---|
| 1級 | あり(2級の1.25倍)+子の加算 | あり(報酬比例×1.25) | あり |
| 2級 | あり+子の加算 | あり(報酬比例) | あり |
| 3級 | なし | あり(報酬比例のみ・最低保障年635,500円) | なし |
モデルケース:月収35万円・子ども2人の会社員
数字を全部覚える必要はありません。
モデルケースでイメージをつかんでください。
月収35万円(これまでの平均月収も35万円程度)・子ども2人・配偶者ありの会社員が、障害等級2級に認定された場合です。
| 内訳 | 年額 |
|---|---|
| 障害基礎年金(2級) | 847,300円 |
| 子の加算(2人) | 487,600円 |
| 障害厚生年金(報酬比例) | 約575,000円 |
| 配偶者加給年金 | 243,800円 |
| 合計 | 年約215万円(月約18万円) |
働けなくなる前の月収35万円に対して、月約18万円。
約6割は公的保障で残り、不足するのは月17万円前後、ということになります。
自分の月収と家族構成で計算したい方は、シミュレーターで試してみてください。
共働き夫婦で、もらえる額は変わる

夫婦それぞれの収入で計算する
共働きの場合、夫と妻のどちらが働けなくなっても家計に影響があります。
そして、傷病手当金も障害厚生年金も「本人の給与」ベースで計算されます。
夫の月収で計算した金額は、妻が働けなくなったときには当てはまりません。
保険を考えるときは、夫婦それぞれの月収で「いくら残るか」を別々に出すのが正解です。
このあたりは、遺族年金を夫・妻別に計算するのと同じ考え方です。
詳しくは【遺族年金はいくら?共働き夫婦が夫・妻別に知る金額と2028年改正】をご覧ください。


共働きの保障設計は「夫婦それぞれで計算」が合言葉です。遺族年金のときと同じですね。
時短勤務中は傷病手当金が下がる
時短勤務中の方に、知っておいてほしい違いがあります。
傷病手当金は、直近12ヶ月の標準報酬月額で計算されます。
つまり、時短で給与が下がっている期間は、傷病手当金もその給与ベースで下がります。
一方、年金には「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」という特例があります。
3歳未満の子どもを育てている間に給与が下がった場合、会社経由で申出書を出しておけば、年金額の計算は時短前の給与水準でみなしてもらえる制度です(さかのぼりは2年まで)。
同じ時短でも、傷病手当金は下がり、年金の計算は守られる。ここが分かれ目です。
時短中の妻の就業不能リスクを考えるときは、「傷病手当金が思ったより少なくなる可能性」を織り込んでおくと、備えの精度が上がります。
見落としやすい3つの注意点

傷病手当金と障害厚生年金は、両方満額もらえない
同じ病気やケガで傷病手当金と障害厚生年金の両方に該当する場合、二重には受け取れません。
障害厚生年金が支給される場合、傷病手当金は年金額を差し引いた差額のみの支給になります(調整の仕組みがあります)。
「1年6ヶ月分の傷病手当金+障害年金を丸ごと足し算」で見込むと、備えの計算がずれるので注意してください。
退職のタイミングで受け取れなくなることがある
保険料の未納があると受け取れないことがある
障害年金には、保険料の納付要件があります。
原則は「加入期間の3分の2以上の納付」ですが、直近1年間に未納がなければよいとする特例があります。
この特例は、2025年の年金制度改正で2036年3月末まで延長されました。
会社員は厚生年金が給与天引きなので基本的に問題ありませんが、転職の谷間や学生時代に国民年金の未納期間がある方は、一度確認しておくと安心です。
金額がわかったら、「引き算」で必要額を出す

ここまでで、働けなくなったときに公的保障からいくら出るかが見えました。
保険で備える額は、ここから引き算で出していきます。

出発点は「もし公的な支えが何もなかったら、生活費として毎月いくら必要か」です。
そこから、今回確認した傷病手当金・障害年金を引きます。
次に、生活防衛資金などの貯蓄でカバーできる分を引きます。
最後に残った金額が、就業不能保険などで備えるかどうかを検討する「残り」です。
残りの具体的な計算手順は、こちらの記事で3ステップで解説しています。
詳しくは【就業不能保険の必要月額の出し方|共働きが3ステップで計算する方法】をご覧ください。

貯蓄でどこまで引けるかの目安は、生活防衛資金の記事が土台になります。
詳しくは【生活防衛資金はいくら必要?共働き世帯の目安と、貯蓄で減らせる保険】をご覧ください。

そもそも就業不能保険が必要かどうかの判断軸は、就業不能保険がいる人・いらない人の判断軸で整理しています。
まとめ:金額を知ってから、保険を考える

最後に、この記事のポイントを整理します。
- 会社員が働けなくなっても、収入はゼロにならず「傷病手当金→障害年金」の2段階で支えられる
- 傷病手当金は給料の約3分の2が通算1年6ヶ月(自営業・扶養内パートは対象外)
- 障害年金は2階建て。月収35万円・子2人のモデルでは2級で月約18万円
- 共働きは夫婦それぞれの月収で別々に計算する。時短中は傷病手当金が下がる点に注意
- 公的保障を引いた「残り」だけを、貯蓄と保険でどう埋めるか考える
働けなくなるリスクへの備えは、不安の大きさではなく、不足する金額から逆算するのが合理的です。
金額を知らずに保険に入るのと、残りだけに絞って入るのとでは、生涯の保険料が数十万〜数百万円変わることもあります。
まずはシミュレーターや必要月額の記事で、ご自身の数字を出してみてください。
そのうえで、「残りをどう埋めるか、自分の家庭だけでは判断しきれない」というときは、無料の保険相談を最終ステップとして使うのも一つの方法です。
保険選び全体の順番は、保険選びロードマップにまとめています。

