就業不能保険はいくら必要?必要月額を出す3ステップ計算法

働けなくなったら、と考えると不安になりますよね。
でも「毎月いくら足りないのか」を数字で出せている人は、ほとんどいません。
私は保険代理店で11年間、1,000世帯以上の相談を受けてきました。
就業不能保険は「不安で入りすぎる人」と「よく分からず入っていない人」の両極端になりやすい分野です。
この記事では、公的保障と貯蓄を引いて、保険で備えるべき「必要月額」を自分で出す3ステップを解説します。
読み終える頃には、あなたに必要な月額と保険期間がわかり、あとは商品を比べるだけの状態になります。
ここを正しく出せるかどうかで、生涯の保険料は数十万〜数百万円変わります。
働けなくなるリスクは「死亡」より身近

保険というと、まず「万が一のとき(死亡)」を思い浮かべる方が多いです。
でも実際に家計を止めるのは、亡くなることより「長く働けなくなること」の方が起こりやすいリスクです。
死亡なら、そこから先の本人の生活費はかかりません。
一方で就業不能は、本人が生きて暮らし続けるので、世帯の支出はほとんど減りません。
むしろ治療費が上乗せされて、支出は増えることもあります。
だからこそ、まず「毎月いくら足りないのか」を数字にすることが出発点になります。

短期で復職できるケースは多いです。ただ、一部の「長引くケース」が家計を根こそぎ崩していきます。確率だけでなく、その振れ幅の大きさが、このリスクの怖いところです。
死亡側の必要額は必要保障額の出し方でまとめています。

STEP1|公的保障でいくら引けるか

必要月額は、いきなり保険で埋める額ではありません。
まず「公的保障で自動的に埋まる分」を引きます。
会社員・公務員は「傷病手当金」でカバー
傷病手当金とは、病気やケガで働けないとき、健康保険から給料の約3分の2が支給される制度です。
受け取れる期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月までです。
つまり会社員なら、最初の1年半は「給料の約3分の2」が公的に補われる前提で考えられます。
障害が残ったら「障害年金」を受け取れる
障害年金とは、病気やケガで日常生活や仕事に支障が残ったときに受け取れる公的年金です。
症状の程度によって等級が分かれ、受け取れる額も変わります。
おおまかな目安は次のとおりです。
- 障害基礎年金(2級):年額847,300円(月あたり約7万円)
- 障害基礎年金(1級):年額1,059,125円(月あたり約8.8万円・2級の1.25倍)
- 子の加算:第1・2子は1人につき年額243,800円、第3子以降は1人につき年額81,300円
- 障害厚生年金:会社員は、これに給与に応じた報酬比例分が上乗せ
※令和8年度(2026年度)の金額です。毎年改定されるため、最新額は日本年金機構でご確認ください。
自営業・フリーランスは「傷病手当金がない」

STEP2|貯蓄(生活防衛資金)でいくら引けるか

次に、貯めてあるお金で埋められる分を引きます。
数ヶ月〜1年ほどで復職できる短期の就業不能は、傷病手当金と生活防衛資金の組み合わせで乗り切れることが多いです。
生活防衛資金がしっかりあれば、その期間はわざわざ保険に頼らなくていい、という考え方です。
ということは、保険で本当に備えたいのは「1年半より先も働けない長期」に絞れます。
ここを絞れると、保険料は大きく下がります。
いくら貯めておくべきかは生活防衛資金はいくら必要かで解説しています。

STEP3|残った「必要月額」を計算する

公的保障と貯蓄を引いて、最後に残った分が「保険で備える必要月額」です。
計算式はこうです。
毎月の支出(固定費+生活費+住居費+今かかっている教育費・仕送り)
−(障害年金 + 配偶者の収入 + 貯蓄からの取り崩し)
= 保険で備える月額
ここで見落としやすいポイントが2つあります。
落とし穴1:団信は「働けないだけ」ではおりない
住宅ローンを組むと団体信用生命保険(団信)に入りますが、団信は原則、死亡や高度障害でしか支払われません。
だから住居費(残った住宅ローン)は、必ず支出に入れて計算します。
落とし穴2:教育費は「一時的か・障害が残るか」で分ける
教育費は、就業不能が「一時的なのか」「障害が残る長期なのか」で扱いを分けて考えます。
まずは最低ライン(今の生活が回る額)から。
食費・水道光熱費・通信費・住居費(残ローン込み)・保険料、そして「今すでにかかっている」教育費や仕送りは、生きている以上ゼロにはなりません。
これは全額を支出に入れて、全員共通の土台にしてください。
次に上乗せライン(任意・障害が残ったときに効く)です。
将来のための教育費の「積立」や、進学資金まで保険で守るかどうかは、上乗せの判断になります。
一時的に働けないだけなら、積立は一度止めても、復職後に取り戻せます。
でも障害が残って働けない状態になると、止めた積立は二度と戻りません。
その結果、子どもの進学を諦めることになる可能性もあります。
保険とは、まさにこういう「確率は低いけれど、起きたら人生設計が変わる出来事」に備えるものです。
だから、進学資金まで守る価値は十分にあります。
一方で、ここまで全部を保険に乗せれば、その分だけ保険料は上がります。
最低ラインは全員必須。進学資金まで守るかは、保険料と天秤にかけて、あなたが決めていい部分です。

私自身は「短期は貯蓄・長期だけ保険」で設計しました
参考までに、我が家の設計も紹介します。
私は死亡に備える収入保障保険に、障害・就業不能の特約を付ける形で1本にまとめました。
考え方はシンプルで、傷病手当金で1〜2年以内に復帰できそうな範囲は貯蓄でカバーし、それより長い就業不能だけを保険に任せる、というものです。
月額は「年間収入 − 障害年金の見込み」で出しました。
住宅ローンは団信では消えない前提なので、住居費も残る想定で少し余裕を持たせています。
短期まで手厚くする選択もありましたが、生活防衛資金がある分は保険を薄くできると考え、長期に絞りました。
細かい金額は覚えなくて大丈夫です。「短期は貯蓄、長期だけ保険」という考え方だけ持ち帰ってもらえれば、設計はぶれません。
世帯タイプ別の目安
同じ計算でも、世帯タイプで必要月額の大きさは変わります。
- 会社員・共働き:配偶者の収入が支えるため必要月額は小さめ
- 会社員・片働き:配偶者の収入で埋めにくく必要月額は大きい
- 自営業・フリーランス:傷病手当金がなく必要月額が最も大きい
必要月額が分かったら「期間」と「目的」を決める

月額が出たら、次は「いつまで備えるか(保険期間)」です。
目安は、傷病手当金が切れる1年半より先から、末子が独立するまで、または60〜65歳までです。
子どもが小さいほど、備える期間は長くなります。
目的は、あくまで「長期で働けなくなったときの生活費の柱」です。
短期のリスクは貯蓄で卒業していく、という前提を忘れないでください。
なお、死亡に備える収入保障保険に「障害・就業不能の特約」を付けて、1本にまとめられる場合もあります。
別々に持つより保険料を抑えられることがあるので、死亡側の保障と一緒に設計するのがおすすめです。
死亡側の考え方は必要保障額の出し方と遺族年金の基礎で解説しています。


まとめ|あとは商品を比べるだけ

就業不能の必要月額は、次の3ステップで出せます。
- 公的保障(傷病手当金・障害年金)を引く
- 貯蓄(生活防衛資金)で短期を埋める
- 残った長期の不足分=保険で備える月額
ここまで出せれば、必要な「月額」「期間」「目的」がそろいます。
あとは、その条件に合う商品を比べるだけです。
治療費そのものへの備え(医療保険の選び方)は、医療保険の選び方で解説しています。

保険選び全体を「どの順番で考えるか」から整理したい方は、【保険の選び方ロードマップ|共働き家族が我が家に必要な保険を自分で決める順番】もあわせてご覧ください。

必要月額を一度出しておくと、保険の見直しがぐっと楽になります。「なんとなく不安だから」で入り続けるのが、いちばんもったいないので。

