必要保障額の計算方法|共働きが”引き算”で出す死亡保険の目安

「うちは死亡保険、いくら入っておけばいいんだろう」。
ふとそう思っても、仕事と子育てに追われて、つい後回しになりますよね。
気づけば、出産や住宅購入のときに勧められた保険のまま、何年も過ぎている。
でも、その保障に根拠があるかと聞かれると、はっきり答えられない。
そんな方は、決して少なくありません。
結論から言うと、必要な死亡保障額は「引き算」で出せます。
遺された家族に必要なお金(支出)から、家族が受け取れるお金(公的保険・配偶者の収入・貯蓄)を引く。
その差額が、保険で備えるべき金額です。
この記事では、その引き算の手順を、共働き家庭の前提でひとつずつ整理します。
読み終えるころには、自分の家庭のだいたいの保障額が見えてくるはずです。
私は保険代理店で11年間、1,000世帯以上のご相談を受けてきました。
その経験から言えるのは、この金額の出し方ひとつで、生涯に払う保険料が数十万円から数百万円単位で変わるということです。
必要保障額とは?「遺族の支出 − 遺族の収入」の不足分のこと

ご相談に来られる方とお話ししていて、いつも感じることがあります。
加入中の保険の保障額が「いくらか」は答えられても、「なぜその金額なのか」を説明できる方は、体感で2割ほど。
残りの8割は、必要保障額を一度も計算しないまま、なんとなくの金額で加入しているのが実情です。
これは加入された方が悪いのではありません。
計算の仕方を教わる機会が、これまでなかっただけです。
必要保障額とは、ひとことで言えば「遺された家族に足りなくなるお金」のことです。
あなたが亡くなった後、家族がこれから必要とするお金(支出)から、家族が受け取れるお金(収入)を引いた、その不足分を指します。
この不足分を死亡保険で埋める、というのが基本の考え方です。

多めに入るほど、保険料はムダになりやすい
「多いに越したことはない」。保障額の話をすると、よくそう言われます。
気持ちはわかります。
ただ、保障額を大きくすれば、その分だけ毎月の保険料は重くなります。
必要のない保障に毎月数千円払い続ければ、10年20年で数十万円。
その分を教育費やNISAに回せたはず、と考えると、過剰な保障は「安心」ではなく「機会損失」になりかねません。
だからこそ、感覚ではなく引き算で、自分の家庭の適正額を知っておく価値があります。
必要保障額は「右肩下がりの三角形」で年々減っていく
もうひとつ大事なのが、必要保障額は一定ではない、ということです。
子どもが小さいうちは、これから育てる期間が長いぶん、必要なお金は大きくなります。
でも、子どもの成長とともに「残りの養育期間」は短くなり、必要保障額もだんだん減っていきます。
グラフにすると、右肩下がりの三角形になります。
この「年々減る」という性質は、あとで保険の種類を選ぶときに効いてきます。
今は「必要保障額は固定ではなく、減っていくもの」とだけ覚えておいてください。

世帯タイプ別のおおよその目安を先に知りたい方は【死亡保険はいくら必要?子育て世帯の目安を世帯タイプ別に解説】をご覧ください。

【ステップ1】遺族に必要なお金(支出)を洗い出す

ここから具体的な引き算に入ります。
まずは支出側、つまり「遺された家族にこれから必要になるお金」です。
大きく分けて4つあります。
- 遺された家族の生活費
- 子どもの教育費
- 住居費(賃貸か、持ち家+団信か)
- 葬儀費用などの一時的な出費
ひとつずつ見ていきます。
遺された家族の生活費
いちばん大きいのが、日々の生活費です。
考え方はシンプルで、「現在の生活費 × 割合 × 必要な年数」で見積もります。
なぜ「割合」をかけるかというと、あなたが亡くなった後は、あなた自身にかかっていた食費やお小遣いなどが減るからです。
一般的な目安として、子どもがいる間は現在の生活費の7割、子どもが独立した後は5割で見積もります。
たとえば今の生活費が月30万円なら、子どもがいる間はおよそ月21万円。
これが、遺された家族の毎月の生活費の出発点になります。
子どもの教育費
次に教育費です。これは進路によって大きく変わります。
幼稚園から大学まですべて公立・国公立なら、子ども1人あたりおよそ1,000万円。
すべて私立(大学は文系)なら、およそ2,500万円が目安です。
実際の進路は、この幅の間に収まることがほとんどです。
| 進路パターン | 教育費の目安(子ども1人あたり) |
|---|---|
| 幼稚園〜大学すべて公立・国公立 | 約1,000万円 |
| 幼稚園〜大学すべて私立(大学は文系) | 約2,500万円 |
なお、生活費に教育費を含めて二重に数えないよう、生活費とは別枠で計算するのがコツです。
住居費は「賃貸か、持ち家+団信か」で大きく変わる
ここが、共働き・持ち家世帯にとって見逃せないポイントです。
住宅ローンを組むとき、多くの方が団体信用生命保険(団信)に加入します。
団信とは、ローンの契約者が亡くなったとき、残りのローンを保険金で完済してくれる仕組みのことです。
つまり持ち家+団信加入済みなら、あなたが亡くなった時点で住宅ローンはゼロになります。
その後の家族に、ローンの支払いは残りません。
一方、賃貸にお住まいなら、家賃はその後もずっと続きます。
生涯の家賃を支出に含める必要があるため、必要保障額は持ち家より大きくなりがちです。
持ち家の場合でも、マンションの管理費や駐車場代などは団信では消えません。
そこだけは支出に残ります。
葬儀費用などの一時的な出費
最後に、葬儀やお墓などの一時的な費用です。
葬儀やお墓などで、200万〜300万円ほどを一つの目安にしておくと安心です。
ここまでの4つを足したものが、遺された家族の「支出の総額」です。
【ステップ2】遺族が受け取れるお金(収入)を引く

私自身、第一子が生まれて住宅を買った後に、自分の死亡保障を組み直したことがあります。
そのとき最初にやったのが、まさにこの引き算でした。
団信に入っているから、住宅ローンは自分が亡くなれば消える。
会社員なので、遺された家族には遺族年金が出る。
妻も働いているから、世帯の収入がゼロになるわけではない。
この3つを支出から引いていくと、残った不足分は思っていたよりずっと小さくなりました。
だから私は、大きな終身保険ではなく、必要な期間だけをカバーする掛け捨ての収入保障保険を選びました。
逆に、妻に万一があった場合は、妻の住宅ローン部分には団信がついていなかったので、妻の死亡保障は私より大きめに設計しています。
共働きだからといって「夫だけ手厚く」にはしませんでした。
数字そのものは家庭ごとに違うので、覚えなくて大丈夫です。
考え方として、「公的保険・団信・配偶者の収入を引いてから、残りを保険で埋める」という順番だけ持ち帰ってもらえれば十分です。
引ける収入は、主に4つあります。
①公的保険その1 ― 遺族年金
会社員・公務員が亡くなった場合、遺された家族には遺族年金が支給されます。
遺族年金とは、亡くなった方に生計を支えられていた家族に、国から支給される年金のことです。
ざっくり言うと、子のある家庭には「遺族基礎年金」、会社員・公務員ならさらに「遺族厚生年金」が上乗せされます。
たとえば会社員で子ども2人の家庭なら、合わせて月15万円前後が一つの目安です。
遺族年金がいくら受け取れるかは、家族構成や働き方で変わります。
共働きでは「夫が亡くなった場合」と「妻が亡くなった場合」で、受け取りやすさに差があります。
その点も含めて、詳しくは「遺族年金はいくら?共働き夫婦が夫・妻別に知る金額と2028年改正」で整理しています。

②公的保険その2 ― 団信で住宅ローンが消える
ステップ1でも触れた通り、団信は「収入を引く」側でも効いてきます。
持ち家+団信加入済みなら、住宅ローンという大きな固定費が丸ごと消えます。
これは公的保険ではありませんが、実質的に大きな保障です。
住宅購入前に入った死亡保険をそのままにしている方は、保障が過剰になっている可能性があります。
家を買ったタイミングは、死亡保障を見直す好機です。
③配偶者の収入 ― 共働きの最大の強み
共働き家庭で最も大きいのが、ここです。
片働き世帯では、大黒柱が亡くなると世帯収入の大部分が失われます。
でも共働きなら、配偶者の収入は残ります。
遺された家族の毎月の生活費を、配偶者の収入と遺族年金で賄えるなら、毎月の不足はほとんど出ません。
これが、共働き世帯の必要保障額が片働き世帯より小さくなる理由です。
④貯蓄・死亡退職金
すでにある貯蓄も、当然「引ける収入」です。
教育費の一部や葬儀費用を貯蓄でまかなえるなら、その分は保険で備える必要がありません。
勤務先によっては死亡退職金や弔慰金が出ることもあるので、社内規定を確認しておくとよいでしょう。
ただし、生活防衛資金(万一のときの当面の生活費)まで保険の代わりに使ってしまうと、いざというときに手元のお金が足りなくなります。
「どこまでを貯蓄で引いて、どこからを保険で備えるか」の線引きは、【生活防衛資金はいくら必要?共働き世帯の目安と、貯蓄で減らせる保険】で詳しく解説しています。


共働きは「夫が亡くなった時/妻が亡くなった時」を分けて計算する

必要保障額の解説の多くは、「夫が大黒柱・妻は専業主婦」を前提にしています。
でも共働き家庭では、亡くなるのがどちらかで結果が変わります。
両方のパターンで考えるのが、共働きの正しい計算の仕方です。
妻の収入があるぶん、夫の必要保障額は専業主婦世帯より小さい
夫が亡くなった場合、妻の収入と遺族年金で毎月の生活費を賄えるケースが多くなります。
その場合、必要保障額の中心は「毎月の生活費の不足」ではなく、「教育費」と「葬儀などの一時費用」に絞られてきます。
片働き世帯のように数千万円規模にはならず、数百万〜1,000万円程度に収まることも珍しくありません。
「共働きだから死亡保険はいらない」と言われることがありますが、それは半分正解で、半分は早とちりです。
毎月の生活費の不足は出にくくても、教育費と一時費用は残るからです。
それでも、妻が亡くなった時の保障は必要
見落とされがちなのが、妻が亡くなったケースです。
妻が亡くなると、夫が育児や家事を一人で担うことになります。
時短勤務に切り替えれば収入は下がり、家事・育児を外注すればその費用もかかります。
つまり妻にも、一定の死亡保障が必要だということです。
我が家で妻の保障を小さくしなかったのも、この理由からです。
2028年改正で男女差は縮むが、子育て期間中は今のまま
ここで一点、知っておきたい制度の話をします。
この男女差は、2028年4月の改正で解消に向かいます。
男性は2028年4月から、女性は段階的に進められる予定です。
ただし、対象はあくまで「子どものいない配偶者」です。
改正の中身(5年の有期給付や約1.3倍の増額など)は、遺族年金の記事で詳しく整理しています。

【計算例】共働き×子2人世帯でシミュレーション

ここまでの引き算を、具体的な数字で通してみます。
以下はあくまで概算の例です。実際の金額は、ねんきん定期便や年金事務所で確認してください。
- 夫35歳(会社員)・妻33歳(会社員)
- 子ども2人(5歳・2歳)
- 持ち家・住宅ローンは団信加入済み
- 現在の世帯生活費は月30万円
- 夫が亡くなったケースで計算
月額方式 ― 毎月の不足から考える
まず、毎月のお金の流れで見ます。
遺された家族の毎月の生活費は、30万円 × 70% で月21万円。
一方、入ってくるお金は、妻の手取り月22万円+遺族年金 月15万円で、月37万円。
毎月の収入37万円が、生活費21万円を上回っています。
つまり、毎月の生活費の不足は出ません。
総額方式 ― 一時的に必要なお金を足す
毎月の生活費は賄えるので、残るのは「まとまって必要になるお金」です。
子ども2人分の教育費の不足見込みが約800万円、葬儀などの一時費用が約200万円。
合わせて、必要保障額はおよそ1,000万円です。
同じ条件でも、妻が専業主婦なら毎月の生活費に不足が出るため、必要保障額は2,000万円を超えてきます。
共働きであることが、いかに保障額を押し下げているかがわかります。
| 項目 | 共働きケース | 妻が専業主婦の場合 |
|---|---|---|
| 毎月の生活費の不足 | ほぼ発生しない | 毎月の不足が発生 |
| 教育費の不足見込み | 約800万円 | 約800万円 |
| 葬儀などの一時費用 | 約200万円 | 約200万円 |
| 必要保障額の目安 | 約1,000万円 | 約2,000万円超 |
自分の数字で出してみる
ここまでは一例です。
生活費も収入も家庭ごとに違うので、最後はあなた自身の数字で出すのがいちばんです。
下のシミュレーターに入力すれば、ここでやった引き算を自動で計算できます。
必要保障額をシミュレーターで計算
計算が面倒な方には、必要保障額を約2分で算出できるシミュレーターも用意しています。家族構成・収入・住宅ローンを入力するだけで、自分の家庭に合った金額が出ます。
必要保障額シミュレーターを使う →※ 入力情報は保存されません・登録不要で使えます
保障額が決まったら「収入保障保険」で効率的に買う

必要保障額が見えたら、次は「どの保険で備えるか」です。
ここで思い出してほしいのが、最初に触れた「右肩下がりの三角形」。
必要保障額は、子どもの成長とともに減っていくのでした。
減っていく保障に、収入保障保険はフィットする
収入保障保険は、保険金を毎月の給料のように受け取るタイプの掛け捨て保険です。
加入後の時間が経つほど受け取り総額が減っていく仕組みなので、「年々減る必要保障額」の三角形にきれいに重なります。
必要な保障を、必要な分だけ持てるわけです。
一括で受け取る定期・終身との違い
同じ死亡保障でも、契約期間中ずっと同じ金額を受け取る定期保険や終身保険は、必要保障額が減った後も大きな保障を持ち続けることになります。
そのぶん保険料は割高になりがちです。
我が家が終身ではなく収入保障を選んだのも、この「ムダなく・割安に」という理由からでした。
保険と貯蓄は分ける。必要な保障は、掛け捨てで効率的に買う。
これが、回り道もしてきた末に私がたどり着いた考え方です。
収入保障保険と定期保険のどちらを選ぶか、共働きならではの設計のコツは、それぞれ別記事で詳しく解説しています。

収入保障保険と定期保険、名前が似ている2つの違いは「収入保障保険と定期保険の違い」で整理しています。

よくある質問

必要保障額は何年ごとに見直せばいい?
決まった年数はありませんが、ライフイベントのたびが目安です。
子どもの誕生、住宅購入、転職、配偶者の働き方の変化。こうしたタイミングで必要保障額は動きます。
とくに住宅購入で団信に入った時は、保障が過剰になっていないか確認する好機です。
保険会社のシミュレーターの金額をそのまま信じていい?
参考にはなりますが、鵜呑みは禁物です。
保険会社のシミュレーターは、安心を大きめに見積もる前提(生活費の割合を高め、配偶者の収入や貯蓄を低めに置くなど)になっていることがあります。
出てきた金額そのものより、「どの数字を引いているか」を確認してください。
引いている項目(遺族年金・配偶者の収入・貯蓄)が自分の実態と合っているかを見れば、金額が妥当かどうか判断できます。
貯蓄が増えたら、保障は減らせる?
減らせます。
貯蓄でカバーできる範囲が広がれば、保険で備える範囲はその分小さくできます。
家計の体力(貯蓄や資産の状況)に応じて、保険でカバーする範囲は人それぞれ変わってよい、というのが私の考えです。
どこまでを貯蓄で引けるかは、生活防衛資金の記事で詳しく扱います。
共働きでも、夫婦両方に死亡保険は必要?
家事・育児の分担状況によります。
どちらかが亡くなった時に、残された側の収入が下がる・外注費がかかるなら、その分の保障は両方に持っておく意味があります。
金額の大小は違っても、「片方だけ」と決めつけないことが大切です。
まとめ:引き算ひとつで、生涯の保険料は数十万〜数百万円変わる

必要保障額は、引き算で出せます。
- 遺された家族の支出(生活費・教育費・住居費・一時費用)を洗い出す
- 受け取れる収入(遺族年金・団信・配偶者の収入・貯蓄)を引く
- 残った不足分が、保険で備えるべき金額
共働き家庭は、配偶者の収入という大きな支えがあるぶん、必要保障額は片働き世帯より小さくなります。
その金額を「年々減る三角形」として捉えれば、収入保障保険で効率的に備えられます。
この引き算をするかしないかで、生涯に払う保険料は数十万円から数百万円単位で変わります。
感覚で大きく入りすぎず、足りなすぎず。自分の家庭の適正額を、一度きちんと出しておく価値はあります。

まずは引き算から。種類や商品選びは、金額が見えてからで十分間に合います。一緒に、納得のいく形を見つけていきましょう。
ここまで読んで「自分の家庭だと引き算がうまくできない」「出した金額に自信が持てない」という場合は、第三者に整理を手伝ってもらうのも一つの方法です。
自分である程度の見当をつけた上で、最終確認として無料相談を使うと、納得感のある選び方ができます。

