個人年金保険はいらない?iDeCo・NISAと比べた判断軸|業界11年

「老後資金は個人年金保険で備えておいたほうがいい」。
職場やネット、保険相談の窓口でそう聞いて、入るべきか迷っている共働きのご家庭は多いと思います。
同時にiDeCoやNISAという言葉も耳に入ってきて、何がどう違うのか、自分の家庭には何が合うのか、整理できないまま止まっている方も少なくありません。
保険代理店で11年間、1,000世帯以上の相談を受けてきました。
この記事では、個人年金保険が「いらない」と言われる理由、それでもあるメリット、iDeCo・NISAとの違いを、売る側ではない立場から整理します。
読み終わるころには、自分の家庭に個人年金保険が必要かどうかを、自分で判断できるようになります。
先に結論をお伝えすると、多くの共働き世帯では優先度は低めです。
ただし家計の状況によっては選択肢になります。
準備の方法を一つ選び直すだけで、老後までに手元に残るお金は数十万〜数百万円変わることもあります。
個人年金保険とは?まず仕組みを30秒で

個人年金保険とは、公的年金に上乗せして自分で準備する私的年金です。
私的年金とは、国の年金とは別に、入るかどうかを自分で決められる任意の年金のことです。
日本の年金は3階建てにたとえられます。
1階が国民年金、2階が厚生年金で、ここまでが公的年金です。
その上の3階にあたるのが、個人年金保険やiDeCo(イデコ)といった私的年金です。
個人年金保険は、大きく2つのタイプに分かれます。
- 定額型:予定利率(保険会社があらかじめ約束する運用の利率)で、将来受け取る額がほぼ決まっているタイプ
- 変額型:運用成績しだいで受取額が増減し、元本割れの可能性もあるタイプ
この記事では、まず円建ての定額型を中心に話を進めます。
変額型については、変額保険の記事で詳しく解説しています。
私自身は、老後資金を個人年金保険では準備していません。
iDeCoとNISAで積み立てています。
理由はシンプルです。
保障は掛け捨て(貯蓄性のない、保障だけの保険)で備える。
お金を増やす部分は運用でおこなう。
この2つを分けたほうが効率的だと、業界の中で確信したからです。
実は以前、保障と貯蓄を組み合わせた商品(外貨建ての保険)に自分で加入していた時期があります。
数年積み立てるうちに、手数料や為替の影響を引いた実際の増え方を見て、これは分けたほうがいいと判断し、解約してNISAに移しました。
数字を細かく覚えなくて大丈夫です。
考え方として「老後資金は保険の外で作る」、これだけ持ち帰ってもらえれば十分です。
ではなぜそう考えるのか、次から個人年金保険が「いらない」と言われる理由を見ていきます。

老後資金は保険の外で作る。まずこれだけ、頭の片隅に置いてください。
個人年金保険が「いらない」と言われる4つの理由

個人年金保険が「いらない」「入らないほうがいい」と言われるのには、はっきりした理由があります。
大きく4つです。
- 中途解約すると元本割れしやすい
- インフレに弱く、お金の価値が目減りしやすい
- 低金利の今は、昔ほど増えにくい
- 受け取るときに税金がかかる場合がある
順番に見ていきます。
理由1 中途解約すると元本割れしやすい
個人年金保険を途中で解約すると、戻ってくるお金(解約返戻金)が、それまで払った保険料の合計を下回ることがよくあります。
とくに加入から数年のうちは、大きく下回るケースもあります。
老後までの長い期間、家計に何が起きるかは誰にも分かりません。
教育費の急な出費や、収入が一時的に減る時期もあるかもしれません。
そのときに引き出しにくいお金として長期間しばってしまうのは、共働き世帯にとって意外と大きな負担になります。
理由2 インフレに弱く、お金の価値が目減りしやすい
定額型の個人年金保険は、契約した時点で将来受け取る額がほぼ決まっています。
これは「いくらもらえるか分かって安心」という長所でもあります。
ただ、物価が上がっても受け取る額は増えません。
受け取るころに物価が上がっていれば、同じ金額でも買えるものは減ります。
つまり金額は約束されても、お金の価値までは約束されないということです。
理由3 低金利の今は、昔ほど増えにくい
個人年金保険の魅力は、もともと予定利率(保険会社が約束する運用の利率)の高さにありました。
金利が高かった時代は、払った保険料に対して受け取る額の割合(返戻率)も高く、老後資金を準備する手段として人気がありました。
しかし今は低金利が続き、予定利率も下がっています。
そのため、お金が増える幅は以前ほど大きくありません。
理由4 受け取るときに税金がかかる場合がある
個人年金保険は、受け取り方や契約のしかたによって、受取時に税金がかかる場合があります。
契約者と受取人が同じ場合、年金形式で受け取ると雑所得、一括で受け取ると一時所得という扱いになり、受け取り方で税金の計算のしかたが変わります。
契約者と受取人が違う場合は、受け取り始めた年に贈与税の対象になることがあります。
「積み立てるときは保険料控除でお得」と案内されることが多いのですが、受け取るときの税金まで含めて考えることが大切です。
ここまでが、個人年金保険が「いらない」と言われる主な理由です。
とはいえ、デメリットばかりではありません。

「悪い商品」ではなく「今の時代・この家庭に合うか」で見るのが大事です。次はメリット側も正直にお話しします。
とはいえメリットもある――両論で正直に見る

ここまでデメリットを並べましたが、個人年金保険が「悪い商品」というわけではありません。
メリットも正直にお伝えします。
主に3つです。
- 個人年金保険料控除が使える(生命保険料控除とは別枠)
- 半強制的に積み立てられる
- 定額型なら受け取る額が決まっていて見通しを立てやすい
1つ目の保険料控除は、いちばん分かりやすいメリットです。
一定の条件を満たした契約なら、個人年金保険料控除という枠が使えます。
これは医療保険などで使う一般の生命保険料控除とは別枠で、所得税と住民税の負担を軽くできる場合があります。
ただし、この控除の枠はそれほど大きくありません。
後ほど触れるiDeCoは掛けた金額がまるごと所得控除(税金の計算のもとになる所得から差し引けるしくみ)になるため、税の面だけで見ても差が出ます。
2つ目は、半強制的に積み立てられることです。
毎月自動で引き落とされ、簡単には引き出せないので、貯めるのが苦手な人にとっては「気づいたら貯まっていた」という効果があります。
3つ目は、定額型なら将来受け取る額が見えていることです。
運用の値動きに一喜一憂したくない人には、この分かりやすさが安心につながります。
こうした「安心」を、お金で買うこと自体は間違っていません。
万が一や老後への備えに安心を持っておくことには、ちゃんと価値があります。
ただ、安心の「買い方」を間違えると、必要以上のコストを払うことになります。
私の考え方はシンプルで、必要な安心は持つ。ただし、できるだけ効率的に用意する、これだけです。
では、同じ「老後資金」と「節税」という目的を、もっと効率的にかなえる方法はないのか。
ここで、このブログの基本的な考え方をお伝えします。
老後資金こそ「分けて、効率的に」――このブログの基本の考え方

このブログの土台にある考え方は、とてもシンプルです。
保険と貯蓄は分ける。
必要な保障は、掛け捨てで効率的に買う。
この2つだけです。

たった2行ですが、これが11年見てきて行きついた結論です。
保険は「万が一への備え」、貯蓄や運用は「将来のためにお金を増やす・貯める」もの。
役割がまったく違うので、別々に持ったほうがシンプルで、結果的に効率的になります。
個人年金保険は、この観点で見ると「保障」と「貯蓄」を組み合わせた商品です。
老後にお金を受け取るための積立に、保険のしくみが組み合わさっています。
そして、組み合わせた商品には、その分のコスト(手数料)が上乗せされます。
老後資金づくりは、突きつめれば「お金を貯める・増やす」が目的です。
だとすれば、保険のしくみを通さず、貯蓄や運用でまっすぐ準備したほうが、コストの分だけ効率的になります。
この「組み合わせると割高になりやすい」という構造は、個人年金保険だけの話ではありません。
学資保険・終身保険・養老保険・外貨建て保険も、同じように保障と貯蓄を組み合わせた商品です。
それぞれの詳しい理由は、貯蓄型の死亡保険・学資保険・外貨建て終身保険・変額保険の記事で解説しています。




どれも「一つで二役」に見えて魅力的ですが、効率という点では、分けたほうが有利になりやすいのです。
では、老後資金と節税を「分けて」用意するなら、具体的にどの方法がいいのか。
その有力な選択肢が、iDeCoとNISAです。
iDeCo・NISAと比べるとどうか

老後資金を「分けて」準備するなら、まず候補になるのがiDeCoとNISAです。
どちらも国が用意した、税の優遇がある制度です。
個人年金保険と並べて、特徴を比べてみます。
| 項目 | 個人年金保険(定額型) | iDeCo | NISA |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 老後資金 | 老後資金 | 自由(老後・教育費など) |
| 積立時の税 | 個人年金保険料控除(所得税 最大4万円/住民税 最大2.8万円) | 掛金が全額所得控除 | なし |
| 運用・受取時の税金 | 増えた分は受取時に課税(雑所得など) | 運用中は非課税・受取時は控除あり | 運用中・受取とも非課税 |
| 引き出し | 途中解約は元本割れの可能性 | 原則60歳まで不可 | いつでも可能 |
| リスク水準 | 低 | 選ぶ商品により低〜高 | 選ぶ商品により低〜高 |
| インフレ対応 | 弱い(受取額が固定) | 運用しだいで対応しやすい | 運用しだいで対応しやすい |
税の優遇という点では、iDeCoが頭ひとつ抜けています。
掛けた金額がまるごと所得控除になり、運用で増えた分にも税金がかかりません。
iDeCoは受け取るときに課税の対象になります。
ただし、一時金で受け取れば退職所得控除、年金形式なら公的年金等控除というしくみが使え、税の負担を抑えられます。
個人年金保険料控除も使えますが、控除できる額の上限は小さく、効果は限定的です。
一方でiDeCoには、原則60歳まで引き出せないという制約があります。
老後資金専用と割り切れる分だけを入れる制度、ととらえると分かりやすいです。
NISAは、運用で増えた分が非課税になり、しかもいつでも引き出せます。
教育費にも老後資金にも使える柔軟さが強みです。
使う順番の目安
- まずNISAで「いつでも使える運用枠」を確保する
- 老後資金専用として上乗せできる余裕があれば、iDeCoを足す
- 個人年金保険を考えるのは、その枠を使い切ってから
リスク水準は、iDeCoもNISAも「選ぶ商品しだい」です。
値動きが不安なら、その中でも値動きの小さい商品を選ぶこともできます。
個人年金保険のように「商品そのものがインフレに弱い」のとは、性質が違います。
共働き世帯の老後資金、どう組み立てる?

共働き世帯には、老後資金づくりで2つの強みがあります。
- iDeCoもNISAも、夫婦それぞれが枠を持てる(2人分使える)
- 厚生年金が2人分あり、公的年金の土台が片働きより厚い
つまり、まず厚めの公的年金があり、その上に夫婦2人分のNISA・iDeCoを積める。
この土台だけでも、老後資金の準備としてはかなり手厚くなります。
個人年金保険を考えるのは、この枠を使い切ってから、というのが効率の良い順番です。
ただし、ここで大事にしているのが「家計の自走力」という考え方です。
自分でお金を管理して、コツコツ運用を続けられる人は、分けたほうが有利になります。
一方で、投資の値動きがどうしても不安、自分では絶対に貯められない自覚がある、という場合もあります。
そういう人にとっては、半強制的に貯まる個人年金保険が「次善の策」として価値を持つこともあります。
答えは、家計の状況や性格によって変わっていいのです。
個人年金保険が向いている人
- 投資の値動きが苦手で、運用は一切やりたくない
- 自分では貯められない自覚があり、強制力がほしい
- iDeCo・NISAを使い切って、さらに余裕がある
あまり向いていない人(多くの共働き世帯)
- iDeCo・NISAの非課税枠をまだ使い切っていない
- 途中で使う可能性のあるお金で準備しようとしている
- インフレでお金の価値が下がるのが心配

「みんなが入っているから」ではなく、「うちの場合はどうか」で決めれば大丈夫です。
よくある質問
Q. 個人年金保険とiDeCo・NISAは併用できますか?
併用できます。
ただ、限られた家計から積み立てる以上、順番が大切です。
多くの共働き世帯では、NISA・iDeCoを先に使い、それでも余裕があれば個人年金保険、という順番が効率的です。
Q. 毎月いくら積み立てるのが目安ですか?
金額そのものより、「どの入れ物を先に使うか」が先です。
同じ金額でも、入れ物しだいで税の優遇や受取額が変わります。
まずはNISA・iDeCoの枠を意識してみてください。
Q. すでに個人年金保険に入っています。解約すべきですか?
一概には言えません。
解約すると元本割れする時期かどうか、保険料控除をどれだけ活かせているか、代わりにNISA・iDeCoでどのくらい準備できるか。
このあたりを並べて比べる必要があります。
判断に迷うときは、今の契約内容を持って専門家に整理してもらうのが近道です。
Q. 共働きなら、夫婦どちらが入るべきですか?
そもそも個人年金保険を急ぐ必要があるかを先に考えたうえで、入るなら収入や働き方、控除の使いやすさで判断します。
ここも、まずはNISA・iDeCoを2人分活かすことが先になります。
まとめ
個人年金保険は「悪い商品」ではありません。
ただ、低金利・インフレ・解約しにくさ・受取時の税金を考えると、多くの共働き世帯では優先度が低めです。
老後資金と節税という目的なら、まず夫婦2人分のNISA・iDeCoを活かす。
それでも余裕があり、強制力や受取額の確実さに価値を感じる人にとっては、個人年金保険が選択肢になります。
大事なのは「みんなが入っているから」ではなく、「うちの家計に合っているか」で選ぶことです。
準備の方法を一つ選び直すだけで、老後までに受け取れる額や税の負担は数十万〜数百万円変わることもあります。
自分の家庭にとっての答えを整理したいときは、今の契約内容を持って、無料の保険相談で第三者に確認してもらうのも一つの方法です。

