医療保険は30代共働き子育てにいらない?業界11年の本音と判断軸

「医療保険、共働きだしいらないかも?」
「出産時に勧められて入ったけど、本当に必要なのか不安」
「周りはみんな入っているし、解約していいのか迷う」
30代の共働き子育て世帯で、こういった迷いを感じている方は多いです。
私は保険代理店で11年間、1,000世帯以上の相談を受けてきました。
その経験からの結論はこうです。

多くの30代共働き子育て世帯にとって、医療保険の優先度は高くありません。ただし「貯蓄額」だけで判断すると間違えます。判断軸は「家計の自走力」です。
家計の自走力とは、突発的な医療費や収入減が発生しても、保険に頼らず家計を回せる力のこと。
この考え方を身につけるだけで、生涯の保険料が数十万〜数百万円変わることも珍しくありません。
この記事では、保険を売らない立場から、共働き子育て世帯にとって医療保険が必要かどうかを判断する軸を解説します。
- 「いらない」と言われる4つの根拠
- それでもゼロにはできない3つのリスク
- 判断軸は「貯蓄額」ではなく「家計の自走力」
- いらない世帯・必要な世帯の特徴
- いらないと判断した後にやるべきこと
「自分の家計には何が必要か」を判断できる状態を作るのが、この記事のゴールです。
そもそも医療保険は何のための保険か

判断軸を語る前に、医療保険の役割を整理します。
ここを誤解したまま「いる/いらない」を考えると、結論を間違えやすくなるからです。
医療費を補うのが医療保険の目的
民間の医療保険は、病気やケガで医療費がかかった時に、給付金で家計の負担を補う保険です。
入院日数に応じて給付される「日額型」、入院や手術ごとにまとまった金額が出る「一時金型」など、給付の仕組みは商品によって異なります。
ただし、日本では民間の医療保険に入っていなくても、医療費の大半は公的医療保険でカバーされます。
民間の医療保険は「公的保険でカバーされない部分」を補う、補完的な役割の保険と考えるのが基本になります。
日本の公的医療保険で大半はカバーされる
日本の公的医療保険には、家計を守る仕組みがいくつも備わっています。
- 窓口負担は原則3割(70歳未満)
- 高額療養費制度で月の自己負担に上限あり
- 傷病手当金で給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給される(会社員)
- 子の医療費は自治体の助成でほぼ自己負担なし(地域差あり)
これだけの仕組みが先に整っているため、民間の医療保険でカバーすべき範囲は意外と狭くなります。
公的医療保険の中身を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

共働き子育て世帯が考えるべきリスクは「治療費」だけじゃない
医療保険を考える時、多くの方が「治療費がいくらかかるか」だけを見ています。
でも共働き子育て世帯では、治療費以外の負担も家計に響いてくるのが現実です。
- 差額ベッド代(個室を希望した場合)
- 食事代・日用品代
- 家族の交通費・付き添い費用
これらは公的保険ではカバーされません。
共働き子育て世帯ならではの視点で、医療保険の必要性を考えていく必要があります。
「30代共働き子育てにいらない」と言われる4つの根拠

まずは「いらない」と言われる根拠から見ていきます。
どれも合理的な理由なので、納得できるものから確認してください。
①高額療養費制度で月の自己負担額は抑えられる
高額療養費制度は、1か月の医療費の自己負担額に上限を設ける仕組みです。
年収約370〜770万円の方であれば、月の自己負担上限はおおむね8〜9万円程度に抑えられます。
100万円の治療を受けても、自己負担は約8〜9万円。
つまり、治療費そのものは想像より大きく膨らみにくい仕組みになっています。
②会社員なら傷病手当金が最長1年6ヶ月支給される
傷病手当金は、病気やケガで働けない期間に給与の約3分の2が支給される、健康保険の仕組み。
支給期間は通算1年6ヶ月まで。
「働けなくて収入が止まる」リスクの大部分を、この公的制度がカバーしてくれます。
そして共働き子育て世帯では、夫婦それぞれが会社員であれば、両方とも傷病手当金の対象になります。
片方が長期入院しても、もう片方の収入は維持される。
片方が倒れても収入が止まらないというのは、片働き世帯にはない、共働きの大きな強みです。
③30代の入院確率は他年代より低い
厚生労働省の患者調査によると、30代で入院する人の割合は、40代以降と比べて低い水準にあります。
確率の低いリスクに対して、何十年も保険料を払い続ける合理性があるか。
これは冷静に考えるべき論点です。
もちろん「確率が低い=ゼロ」ではないので、確率だけで判断するのは危険ですが、判断材料の一つにはなります。
④保険料を払い続ける機会損失
月3,000円の医療保険を30年払い続けると、総額は108万円になります。
夫婦で月5,000円なら、30年で180万円。
もしこの保険料を貯蓄やNISA(国の少額投資非課税制度)での運用に回していたら、家計の自由度や将来の資産額は大きく変わってきます。
「保険料は安心料」と捉えること自体は間違いではありません。
ただ、安心の「買い方」を間違えると、必要以上のコストを払うことになります。
この観点は、医療保険を検討する時に必ず持っておきたい視点です。
それでもゼロにはできない3つのリスク

「いらない」と言われる根拠は合理的です。
ただ、それで即「不要」と断定するのは乱暴。
公的保険でカバーしきれないリスクは、確かに残っています。
①高額療養費の対象外費用
高額療養費制度は、保険適用の治療費にのみ上限を設ける仕組みです。
以下の費用は対象外で、全額自己負担になります。
- 差額ベッド代(個室代)
- 食事代(1食510円程度)
- パジャマ・タオルなどの日用品
- 家族の交通費・食事代
- 先進医療の技術料
個室や少人数部屋を希望すると、1日5,000〜10,000円程度の差額ベッド代(保険適用外の部屋代)がかかります。
2週間入院した場合、差額ベッド代だけで10万円前後の負担になるケースも珍しくありません。
②長期治療になった時の家計インパクト
30代の入院確率は確かに低めです。
ただ、1,000世帯以上の相談を受けてきた中で、確率の話とは別の現実を何度も見てきました。
「入院確率が低い」と「いざ起きた時の家計インパクト」は、まったく別の論点だからです。

同年代でがん闘病が1年半続いて貯蓄ゼロになった方、白血病で1年入院していた方、脳卒中後にリハビリ入院から杖の生活になった方、5年間がんの通院治療を続けている方。統計上の確率は低くても、現場では一定数いらっしゃるケースです。
がんの治療は、近年は入院ではなく外来通院での抗がん剤治療が主流。
月数万円〜10万円の治療費が、数か月〜年単位で続くケースもあります。
傷病手当金は通算1年6ヶ月で終わるため、それを超えて治療が続く場合は収入面の備えも必要になってきます。
③共働き特有のリスク(夫婦どちらかが倒れた時の家事育児負担)
共働き世帯は「二馬力家計」が強みですが、その分、片方が倒れた時の負担も独特です。
これまで2人で回していた家事・育児・送迎を、1人で抱えることになるからです。
結果として、もう片方も働く時間を減らさざるを得ないケースが出てきます。
- 家事代行・ファミリーサポートなどの外注費用
- 外食・お惣菜・宅配が増えることによる食費の増加
- もう片方が時短勤務に切り替えた場合の収入減
共働きだから医療保険が不要、と単純には言えないのが現実です。
医療保険が必要かどうか、プロに相談してみる
「公的保険でカバーされるとわかっても、家計に当てはめると判断が難しい」という方は、無料の保険相談サービスで、あなたの家計に合った判断をプロに確認してもらう方法もあります。
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判断軸は「貯蓄額」ではなく「家計の自走力」

ここまでの内容を踏まえて、判断軸を決めていきます。
多くのサイトは「貯蓄300万円あれば医療保険は不要」と書いていますが、この基準は子育て世帯にとって粗すぎる、というのが私の見方です。
「貯蓄300万円基準」の限界
「貯蓄300万円あれば医療保険は不要」という基準には、子育て世帯特有の落とし穴があります。
子育て世帯の貯蓄は、その多くが教育費や住宅関連の積立で占められているからです。
判断軸として使うべきなのは「用途の決まっていない、自由に取り崩せるお金」です。
「家計の自走力」という新しい判断軸
このブログでは「家計の自走力」を判断軸として提案しています。
家計の自走力とは、突発的な医療費や収入減が発生しても、保険に頼らず家計を回せる力のことです。
具体的には、次の3つの要素で判断します。
- 生活防衛資金(生活費6ヶ月〜1年分の現預金)が確保できているか
- 用途の決まっていない自由資金が別途あるか
- 夫婦どちらかの収入が止まっても、もう片方の収入で生活できるか
この3つが揃っていれば、医療保険でカバーすべき範囲はかなり小さくなります。
逆に、この3つのどれかが欠けているなら、医療保険を検討する価値があります。

私自身も医療・がん保険に加入していましたが、生活防衛資金+αが確保できたので近々解約予定です。長期治療リスクへの備えは、貯蓄と妻と私の収入の両輪で対応できる目処が立ったからです。数字を覚えなくても、考え方として「家計の自走力に応じて保険でカバーする範囲を変える」だけ覚えてもらえれば、判断の軸ができます。
ちなみに子どもの医療保険には加入させています。理由は、親と子では「想定するリスク」が違うからです。
子の医療保険については、別記事で詳しく解説する予定です。
医療保険が「いらない」共働き子育て世帯の特徴

家計の自走力が十分な世帯の特徴を、チェックリストにまとめます。
自分の家計に当てはめながら確認してください。
- 夫婦とも会社員で、傷病手当金が使える
- 生活費6ヶ月〜1年分の現預金が確保できている
- 教育費・住宅関連の積立とは別に、自由に使える資金がある
- 片方の収入だけでも当面の生活はまかなえる
- NISA等で資産形成が継続できている
4つ以上当てはまるなら、医療保険の優先度は低いと判断できます。
2つ以下なら、医療保険を検討する価値があります。
家計の自走力が十分なら、医療保険でカバーすべきリスクの大半は家計の中で吸収できます。
毎月の保険料相当額を貯蓄やNISA等の資産形成に回すのも一つの考え方です。
差額ベッド代や食事代といった対象外費用も、生活防衛資金から問題なく支払える状態を作っておくのが基本になります。
それでも医療保険を検討すべき共働き子育て世帯

逆に、医療保険を検討する価値がある世帯もあります。
家計の自走力が足りないケースです。
①自営業・フリーランス
自営業・フリーランスの方は、傷病手当金が使えません。
働けない期間がそのまま収入ゼロにつながるため、共働きでも片方が自営業なら、医療保険や就業不能保険(病気やケガで長期間働けない時に毎月給付金が出る保険)の必要性が一段上がります。
会社員と同じ判断軸を当てはめないように注意してください。
②生活防衛資金が確保できていない
生活費6ヶ月分の現預金が手元にない場合、医療費の突発出費は家計を直撃します。
家計の自走力が十分でないので、医療保険で補う価値があります。
ただし、本来の優先順位は「医療保険に入る前に生活防衛資金を貯める」です。
保険料を払いながら生活防衛資金も貯めるのは、家計に二重の負担をかけることになります。
掛け捨て(解約時の返戻金がない代わりに保険料が安いタイプ)の医療保険を一時的に持ちつつ、生活防衛資金が貯まったら解約を検討する、という考え方もあります。
③心理的に保険があった方が安心な人
家計の自走力は十分でも、保険がないことに不安を覚える方もいます。
こうした心理面のコストは、合理的でないようでいて、家計を考える上で大事な要素です。
不安を抱えたまま生活する精神的コストも、家計の一部だからです。
掛け捨てで月数千円の医療保険なら、「安心料」として加入する選択は十分にあります。
大事なのは「コストとして納得した上で選んでいるかどうか」です。
「入る方向で検討したい」という方は、具体的な選び方をこちらの記事にまとめています。

医療保険「いらない」と判断した後にやるべきこと

「うちは家計の自走力がある。医療保険はいらない」と判断したら、次の手順で行動します。
順番を間違えると、かえって損するケースがあるので注意してください。
①今加入中の医療保険を「即解約」しない
すでに加入している医療保険がある場合、すぐに解約するのは避けてください。
解約前に必ず以下を確認しましょう。
- 健康診断で要再検査・治療中の項目がないか
- 近年に手術・入院をしていないか(商品により告知期間は2〜5年)
- 持病や通院中の疾患がないか
これらに該当すると、新規加入できなかったり、条件付きでしか加入できなくなる可能性があります。
解約は元に戻せないので、「現時点で健康なら新規加入できる状態か」を必ず確認してから判断してください。
②生活防衛資金の確保を優先する
医療保険を解約した後、または最初から加入していない場合、最優先で取り組むのは生活防衛資金の確保です。
目安は生活費の6ヶ月〜1年分。
医療費に限らず、突発的な収入減や予期せぬ出費に対する家計の防御線になります。
普通預金または定期預金で、すぐに引き出せる形で確保しておくのが基本です。
③貯蓄やNISAで教育費・老後資金を準備する
生活防衛資金が確保できたら、保険料相当額を貯蓄やNISA等の資産形成に回すのも一つの考え方です。
夫婦で月5,000円の保険料を30年間NISAで運用すれば、180万円の元本が長期的にはさらに増える可能性があります。
教育費の準備をNISAでするかどうかで悩んでいる方は、こちらの記事もご覧ください。

④保険全体の優先順位を見直す
医療保険を解約・見直すタイミングは、保険全体を見直す好機です。
共働き子育て世帯で本当に優先度が高いのは、死亡保障です。
万が一の時に残された家族の生活費・教育費・住居費をどう確保するか。
医療保険の保険料を削った分を、本当に必要な死亡保障に回すという考え方もあります。
必要保障額の出し方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ:自分の家計の自走力で判断しよう

30代共働き子育て世帯にとって、医療保険の優先度は多くの場合高くありません。
ただし、判断軸は「貯蓄額」ではなく「家計の自走力」です。
- 公的保険で医療費の大半はカバーされる
- 共働きなら傷病手当金が両方の収入を守る
- 家計の自走力が十分なら医療保険の優先度は低い
- 自営業・生活防衛資金不足の場合は検討の価値あり
- 解約前に必ず健康状態を確認する
この判断軸を持つだけで、生涯の保険料が数十万〜数百万円変わることも珍しくありません。
大事なのは「みんなが入っているから」ではなく、「自分の家計の自走力で判断する」こと。
家計の自走力が十分なら、保険料を抑えてその分を貯蓄やNISAに回す。
自走力が足りなければ、まず生活防衛資金を貯めつつ、掛け捨ての医療保険で家計を守る。
このシンプルな判断軸で、医療保険の悩みはほぼ整理できます。
すでに加入中の方は、解約する前に必ず健康状態と新規加入できる状態かの確認だけは忘れないようにしてください。
「自分の家計の自走力がどれくらいあるかわからない」「どの保険を見直して、どれを残すべきか判断が難しい」という場合は、無料の保険相談を活用するのも一つの方法です。
ただし、保険知識ゼロの状態で相談に行くと、必要以上の保険を勧められるケースもあります。
相談先の選び方は、こちらの記事にまとめています。

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