車両保険はいらない?貯蓄で決める判断基準と外すタイミング

「新車だから」と勧められるまま車両保険を付けたものの、更新のたびに「いつまで付けるんだろう」と迷っていませんか。
車両保険の有無で、自動車保険の保険料は年2〜5万円ほど変わるケースが多いです。
10年単位で見れば、付け方・外し方しだいで生涯の自動車保険料は数十万円変わる計算になります。
保険代理店で11年間、1,000世帯以上の相談を受けてきた私が、車両保険を「付ける・外す」の判断基準をお渡しします。
結論はシンプルで、判断基準は「車の買い替え費用を貯蓄で用意できるか」の1つだけです。
車齢が何年か、という世間の目安より先に、まずここから考えていきましょう。
車両保険とは?補償範囲と2つのタイプ

車両保険は、自動車保険のうち「自分の車」の損害を補償する部分です。
事故で車が壊れたときの修理費や、全損(修理できないほどの損害)になったときの買い替え費用に対して、契約時に決めた保険金額を上限に保険金が支払われます。
対人賠償・対物賠償が「相手への補償」、人身傷害が「自分や同乗者のケガへの補償」なのに対し、車両保険は「自分の車への補償」という位置付けです。

図の右側、オレンジの部分だけが今回のテーマです。
自動車保険全体の仕組みと保険料の下げ方は、自動車保険はなぜ差がつく?保険料を下げる8つのポイントで解説しています。

一般型とエコノミー型、補償範囲の違い
車両保険には大きく2つのタイプがあります。
| 損害の内容 | 一般型 | エコノミー型 |
|---|---|---|
| 車同士の事故 | ○ | ○ |
| 台風・洪水などの自然災害 | ○ | ○ |
| 盗難・いたずら | ○ | ○ |
| 当て逃げ | ○ | △(会社による) |
| 単独事故(電柱・ガードレール) | ○ | × |
| 動物との衝突 | ○ | ×(会社による) |
| 地震・津波・噴火 | × | × |
エコノミー型は保険料を抑えられますが、単独事故や動物との衝突が対象外になることが多い点は覚えておいてください。
タイプの名称や補償範囲は保険会社によって異なるため、契約前に必ず確認しましょう。
加入率は約47%。半数は付けていない
損害保険料率算出機構のデータでは、車両保険の普及率は約47%です。
「付けるのが当たり前」でも「外すのが当たり前」でもなく、ほぼ半々に分かれている補償、というのが実態です。
だからこそ、世間の平均ではなく、自分の家計に合わせた判断軸が必要になります。
車両保険が「いらない」と言われる4つの理由

- 保険料が大きく上がる
- 受け取れる保険金は年々減っていく
- 一度使うと3年間、保険料の割引率が下がる
- 修理費が全額補償されるとは限らない
1つ目は保険料です。
年齢や等級によって幅がありますが、車両保険の有無で保険料が年2〜5万円ほど変わるケースが多いです。
2つ目は保険金額の仕組みです。
車両保険で受け取れる金額の上限は「その時点の車の時価額(市場で取引される価格)」を基準に毎年見直されます。
新車のときの購入価格ではありません。
3つ目は等級への影響です。
車両保険を使うと翌年から等級が下がり、割引率の低い「事故有」の料率が適用されます(仕組みは後半でくわしく解説します)。
4つ目は自己負担です。
免責金額(事故のとき自分で負担すると契約時に決めた金額)の設定や時価額の上限があるため、修理費の全額が戻ってくるとは限りません。
どれも事実ですが、上の4つは「いらない理由」というより「保険のコストと限界」の話です。
付けるかどうかは、次の章の基準で決めるのがシンプルです。
判断基準は1つ。「車の買い替え費用を貯蓄で引けるか」

ここからが本題です。
当ブログでは一貫して「公的保険で引く→貯蓄で引く→残りを保険で」という順番をお伝えしてきました。
車両保険にも、同じ考え方がそのまま使えます。
ただし1つだけ、死亡保障や医療保険と大きく違う点があります。
車の損害を助けてくれる公的保険は、ありません。
高額療養費も遺族年金も、車の修理費には関係がありません。
だからこそ車両保険の判断は、「貯蓄でどこまで引けるか」がすべてになります。
車の買い替えは「事故がなくても発生する支出」
考え方の出発点はここです。
車は事故に遭わなくても、いずれ買い替えの時期がやってきます。
つまり「次の車の購入費用」は、保険で備えるかどうか以前に、いずれ必ず必要になるお金です。
だとすれば、買い替え費用は毎月・毎年の予算として積み立てておくのが本来の姿です。
そして買い替え積立ができている家計にとって、全損事故は「買い替えの時期が予定より早く来た」という出来事に変わります。

保険で備える前に「そもそも積み立てるお金」だった、というのが車両保険の面白いところです。
購入直後でも、年数が経っても、貯蓄で引ける

車両保険で受け取れる保険金の上限(時価額)は、年々下がっていきます。
一方で、次の買い替えに向けた積立は、年々増えていきます。
購入直後は、車を貯蓄で買えた家計なら、大きな出費に耐える力がもともとあります。
数年後は、時価額が下がる一方で、次の買い替え積立が育ってきています。
10年前後になると、受け取れる保険金はわずかになり、積立はほぼ完成しています。
どの時点を切り取っても、「保険で守らなければいけない範囲」は思ったより小さい。
保険で守る範囲は、時間とともに縮んでいく。車両保険の優先度が下がる理由です。
逆に言えば、ローン返済中や積立がまだ育っていない時期は、保険で埋める価値があります。
生活防衛資金を車の修理に使う前提はNG
1つだけ注意があります。
「貯蓄があるから車両保険はいらない」と考えるとき、その貯蓄が生活防衛資金なら話が変わります。
生活防衛資金は、病気・ケガ・失業に備えて生活費の数ヶ月分を確保しておくお金です。
車の修理や買い替えで取り崩す前提にしてしまうと、本当に必要な場面で足りなくなります。
車両保険の判断に使っていい貯蓄は、生活防衛資金とは別枠の「車の買い替え積立」です。
生活防衛資金の考え方は、生活防衛資金はいくら必要かを解説した記事をご覧ください。

我が家が2台とも車両保険を付けている理由
ここまで読むと、「じゃあ、ゆうは外しているんですよね?」と思われるかもしれません。
実は、我が家は2台とも車両保険を付けています。
2台とも新車を一括購入し(200万円と400万円)、どちらも一般型・免責金額は1回目0円・2回目以降10万円という設定です。
買い替え費用の積立はしているので、貯蓄の面だけで見れば外せる状態です。
それでも付けているのには、我が家なりの理由があります。
- 動物との衝突が多い地域に住んでいる(エコノミー型では対象外が多いため一般型を選択)
- 年間1万kmほど走るため、事故に遭う確率がそもそも高い
- 妻が運転に不安を感じている
- 「車両保険はあったほうがいい」という妻の意向
最後の1つは、正直に言えば合理ではなく感情です。
それでも私は、今の形で良いと思っています。
保険は数字だけでなく、家族の安心のために持つものでもあるからです。
数字を覚えなくても、考え方として「買い替え費用を貯蓄で用意できるなら車両保険の優先度は下がる。ただし事故に遭いやすい環境や家族の安心感で答えは変わっていい」——この2段構えだけ持ち帰ってもらえれば十分です。
迷ったら:車両保険を付ける価値が高い3つのケース

- 車をローンで購入し、返済が残っている
- 買い替え費用の積立がまだ育っていない
- 事故に遭う確率が高い(走行距離が多い・動物や交通量の多い地域・運転に不安がある)
特にローン返済中の全損は要注意です。
車がないのにローンだけ残り、次の車の費用も別に必要という、二重の負担になりかねません。
自分の車で「車両保険あり・なし」の保険料がいくら違うかは、見積もりを取ると正確に分かります。
等級の仕組み:「使うと損」になるラインを知っておく

車両保険は「付けるかどうか」だけでなく、付けた後に「使うかどうか」の判断も大切です。
仕組みを知らずに小さな修理で使ってしまい、後悔される方が実際にいらっしゃいます。
等級と割引率の一覧表
自動車保険には1〜20等級の「ノンフリート等級制度」があり、等級と事故歴の有無で保険料の割引率が決まります。
初めての契約は6等級から始まり、1年間無事故で1等級ずつ上がっていきます。
| 等級 | 無事故 | 事故有 |
|---|---|---|
| 20等級 | −63% | −51% |
| 19等級 | −57% | −50% |
| 18等級 | −56% | −46% |
| 17等級 | −55% | −44% |
| 16等級 | −54% | −32% |
| 15等級 | −53% | −28% |
| 14等級 | −52% | −25% |
| 13等級 | −51% | −24% |
| 12等級 | −50% | −22% |
| 11等級 | −48% | −20% |
| 10等級 | −46% | −19% |
| 9等級 | −44% | −18% |
| 8等級 | −38% | −15% |
| 7等級 | −27% | −14% |
| 6等級 | −13% | ― |
| 5等級 | −2% | ― |
| 4等級 | +7% | ― |
| 3等級 | +38% | ― |
| 2等級 | +63% | ― |
| 1等級 | +108% | ― |
※損害保険料率算出機構の参考純率に基づく標準的な割増引率です。保険会社・共済によって異なる場合があります。
※前年に契約のない新規の6等級は+3%の割増から始まります。
4等級以下は割引ではなく割増になり、等級が下がるほど保険料の負担が大きくなります。
使うと「3年間」割引率が下がる
車両保険を使う事故の多くは「3等級ダウン事故」に当たります。
たとえば単独事故で車両保険を使うと、翌年に等級が3つ下がるだけでなく、3年間「事故有」の割引率が適用されます。
表を見比べると、同じ17等級でも無事故−55%・事故有−44%と、割引率に大きな差があることが分かります。
20等級・年間保険料3万円の方が3等級ダウン事故を1回起こすと、下の図のように3年かけて元の等級に戻ります。

戻るまでの3年間で、保険料の負担増は合計およそ4万円になる計算です。
つまり4万円以下の修理なら、保険を使わず自費で直したほうが得だった、ということが起こり得ます。
なお、台風・盗難・飛び石などで車両保険を使った場合は「1等級ダウン事故」となり、影響は1年で済みます。
使う・使わないの目安式
私がご相談でお伝えしていた目安はこの式です。
「今の年間保険料 × 30% × 3年 + 免責金額」より修理費が小さいなら、使わないほうが得なことが多い
3年間の保険料の上がり幅は等級によって変わるため、あくまでざっくりした目安です。
ただ「数万円の修理で保険を使うと、かえって損をする場合がある」という感覚を持っておくだけで、判断を間違えにくくなります。
実際のご相談でも、1年に2回事故に遭って等級が大きく下がり、「1回目の小さな修理は保険を使わなければよかった」と後悔される方がいらっしゃいました。
1年間に2回保険を使うと、等級は最大で6つ下がります。
迷ったら、保険会社に「使った場合と使わなかった場合の保険料」を試算してもらってから決めても遅くありません。
外すタイミングは「車齢」ではなく「貯蓄の進み具合」

世間の目安は9〜13年。でも本質は別にある
車齢別のデータを見ると、新車時には約88%の方が車両保険を付けていますが、10年目には約61%まで下がります(SOMPOダイレクト・2022年度契約データ)。
税金が上がる13年目には約52%と、さらに減っていきます。
「時価額が下がって、受け取れる保険金が保険料に見合わなくなったから外す」というのが世間の理屈です。
ただ、私は順番が逆だと考えています。
本質は「貯蓄で引けるようになったから外せる」です。
保険金が減ったかどうかではなく、買い替え積立が育ったかどうか。
積立が育っていれば車齢が浅くても外せますし、育っていなければ車齢13年でも外すのは危険です。
外していいかは、この順番で確認

図の3つの質問をすべてクリアできるなら、車齢に関係なく外す選択はありだと思います。
1つでも引っかかるなら、外すのはその課題を解消してからで遅くありません。
一方で、年式が古く車両保険金額が20〜30万円しか設定できない車でも「付けたい」というご相談は意外と多くあります。
受け取れる保険金と支払う保険料のバランスを確認した上で、「その保険料を買い替え積立に回したらどうなるか」まで含めて考えてみてください。
車両保険のよくある質問

Q. 新車を買ったら、何年まで車両保険を付けるべきですか?
「何年」という正解はありません。
買い替え積立が育ち、全損しても貯蓄で買い替えられる状態になったら外せます。
目安を挙げるなら、積立額がその時点の車両保険金額(時価額)を超えたあたりが1つの区切りです。
Q. 中古車にも車両保険は必要ですか?
設定できる保険金額が低くなるため、優先度は下がります。
ただしローンで購入した場合や、貯蓄がまだ薄い場合は付ける価値があります。
Q. エコノミー型でもいいですか?
単独事故や動物との衝突が対象外になることが多い点を理解した上でなら、選択肢になります。
保険料の安さだけでなく、補償範囲とのバランスで選んでください。
Q. 免責金額はいくらにすべきですか?
初めてなら0円がシンプルです。
等級の仕組みが分かってきたら、「小さな修理では使わない」前提で免責5〜10万円に上げて保険料を下げる方法もあります。
まとめ:車両保険は「買い替え積立」とセットで考える

- 判断基準は「車の買い替え費用を貯蓄で引けるか」の1つ
- 買い替えは事故がなくても来る支出。積立が育つほど保険で守る範囲は縮む
- 判断に使う貯蓄は生活防衛資金ではなく「買い替え積立」
- 事故に遭いやすい環境や家族の安心感で、答えは変わっていい
- 使うかどうかは「保険料×30%×3年+免責金額」と修理費の比較が目安
車両保険の付け方・外し方で、生涯の自動車保険料は数十万円単位で変わります。
まずは自分の車で「車両保険あり・なし」の差額を知るところから始めてみてください。
差額が分かれば、この記事の判断基準と照らし合わせて、自分の答えを出せるはずです。
自動車保険そのものの選び方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。


