公的保険とは?種類と役割をやさしく解説!

- 高額療養費ってよく聞くけど、内容はよくわからない
- 自分に万が一があったとき、遺族年金はいくらもらえるの
- そもそも公的保険ってどんな種類があるか知らない
民間保険を選ぶうえで、公的保険の存在は重要です。
公的保険の内容を知っているかどうかで、民間保険の選び方は大きく変わります。
しかし、公的保険の名称は知っていても、保障内容を知らない人がほとんどです。
実際にその制度を使う場面になって初めて、内容を知るケースが多いものです。
私は保険代理店で11年間働き、1,000世帯以上の保険相談をしてきました。
相談に来る方の多くが、公的保険について「聞いたことはあるけど内容はわからない」という状態でした。
この記事では、民間保険を選ぶうえで特に関係がある7つの公的保険について解説します。
この記事を読むメリットは以下のとおりです。
- いざというときに公的保険が、どんな保障をしてくれるのかわかる
- 漠然とした不安が、数字で判断できるようになる
- 民間保険を検討する際、入りすぎを防ぎ、無駄な保険料を払わずに済む

公的保険の知識は、民間保険を選ぶうえでの土台になります。一緒に確認していきましょう。
公的保険は7つのリスクに備えることができる最強の保険

私たちの生活にはさまざまなリスクがあります。公的保険は、そうしたリスクのほとんどをカバーしてくれる心強い制度です。
先にお伝えすると、公的保険が対応する主なリスクは以下の7つです。
- 病気やケガのとき
- 出産のとき
- 亡くなったとき
- 障害を負ったとき
- 介護が必要なとき
- 老後の年金
- 失業したとき
順番に解説していきます。
病気やケガのとき(健康保険・国民健康保険)
病気やケガで病院を受診した場合、医療費の自己負担は基本的に3割です(70歳未満の場合)。残りの7割は健康保険が負担してくれています。
さらに、1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合、超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があります。
70歳未満の方の、1か月あたりの自己負担上限額は次のとおりです。
| 年収の目安 | 〜2026年7月診療分 | 2026年8月診療分〜 | 年間上限(新設) |
|---|---|---|---|
| 約1,160万円以上 | 252,600円+1% | 270,300円+1% | 168万円 |
| 約770万〜1,160万円 | 167,400円+1% | 179,100円+1% | 111万円 |
| 約370万〜770万円 | 80,100円+1% | 85,800円+1% | 53万円 |
| 〜約370万円 | 57,600円 | 61,500円 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | 29万円 |
表の「+1%」は、医療費が一定額を超えた分の1%が上乗せされる仕組みです。
※出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」。細かな金額は今後の政令などで変わる場合があります。
たとえば年収500万円の方が、1か月に100万円の医療費(窓口負担3割で30万円)がかかったとします。
このとき自己負担の上限は、2026年7月診療分までは約8万7,000円です。
2026年8月診療分からは、約9万3,000円になります。
また、病気やケガで仕事を休んだとき、会社員は「傷病手当金」として給与の約2/3を最大1年6ヶ月受け取ることができます。
高額な医療費になりそうな場合も、高額療養費制度のおかげで自己負担は思ったより少なくて済むことが多いです。

大企業の健康保険組合や公務員の共済組合に加入している方は、さらに「付加給付」という独自の制度があることも。自己負担の上限が月2〜3万円程度に抑えられるケースもあるので、自分の組合の制度を確認してみましょう!
高額療養費の上限額早見表と2026年8月改正の内容は【高額療養費はいくらで頭打ち?共働きの上限額と2026年8月改正】で詳しく解説しています。

出産のとき
出産時には「出産育児一時金」として、1子につき50万円が支給されます。
また、会社員の女性は産休中に「出産手当金」として、給与の約2/3を出産日前後の最大98日間受け取ることができます。
亡くなったとき(遺族年金)
家計を支える方が亡くなった場合、遺された家族には遺族年金が支給されます。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
遺族基礎年金(国民年金加入者全員が対象)
- 18歳以下の子どもがいる配偶者に支給
- 支給額:847,300円+子の加算(2026年度)
- 子の加算:第1子・第2子は各243,800円、第3子以降は各81,300円
遺族厚生年金(会社員・公務員のみ)
- 亡くなった方の老齢厚生年金の3/4が支給される
- 子がいない配偶者にも支給される(※2028年4月〜改正予定あり)
遺族年金の月額目安(会社員が亡くなった場合・厚生年金加入25年想定・2026年度)
| 亡くなった方の年収 | 子0人 | 子1人 | 子2人 | 子3人 |
|---|---|---|---|---|
| 約300万円 | 約27,000円 | 約118,000円 | 約138,000円 | 約144,000円 |
| 約400万円 | 約34,000円 | 約125,000円 | 約145,000円 | 約152,000円 |
| 約500万円 | 約42,000円 | 約133,000円 | 約153,000円 | 約160,000円 |
| 約600万円 | 約51,000円 | 約142,000円 | 約162,000円 | 約169,000円 |
※ 遺族基礎年金+遺族厚生年金(厚生年金加入25年・平均標準報酬月額を年収÷12で算出)の合算目安です。子0人の場合は遺族基礎年金の支給なし(遺族厚生年金のみ)。自営業・フリーランスは遺族基礎年金のみで子0人の場合は支給なし。実際の受給額は加入期間・収入・家族構成等によって異なります。
障害を負ったとき(障害年金)
病気やケガによって生活や仕事に支障が出た場合、障害年金が支給されます。
障害基礎年金(国民年金加入者全員が対象)
- 1級:1,059,125円/年(2026年度)
- 2級:847,300円/年(2026年度)
- 子の加算あり(遺族基礎年金と同額)
障害厚生年金(会社員・公務員のみ)
- 障害基礎年金に上乗せして支給される
- 基礎年金にはない3級まで支給対象になる
障害年金の受給額目安(2026年度)
| 障害等級 | 障害基礎年金 (全員対象) |
障害厚生年金 (会社員・公務員のみ) |
|---|---|---|
| 3級 | 支給なし | 月額 約51,000円〜 (最低保障額。職歴による) |
| 2級 | 月額 約71,000円+子の加算 | 上記に加算(職歴による) |
| 1級 | 月額 約88,000円+子の加算 | 上記に加算(職歴による) |
※ 子の加算:第1子・第2子は各月約20,300円、第3子以降は各月約6,800円。障害厚生年金の額は平均標準報酬月額・加入月数によって異なります。実際の受給額は等級認定や加入状況によって変わります。

障害年金は「重い障害にならないともらえない」と思っている方も多いですが、比較的軽い障害でも受け取れるケースがあります。
介護が必要なとき(介護保険)
40歳以上になると介護保険料を支払い始め、介護が必要になったときに介護サービスを1〜3割の自己負担で受けられます。
65歳以上で要介護・要支援と認定された場合が主な対象です(特定の疾患による場合は40〜64歳でも対象)。
利用できるサービスの例:訪問介護・訪問看護、デイサービス、施設入所など

介護費用は公的保険でかなりカバーされますが、施設の費用や食費は自己負担です。介護が長期化すると家計への影響が大きくなることもあります。
老後の年金(老齢年金)
65歳になると老齢年金が支給されます。
老齢基礎年金(全員が対象)
- 満額:847,300円/年(2026年度)
- 保険料の納付期間によって金額が変わる
老齢厚生年金(会社員・公務員のみ)
- 基礎年金に上乗せして支給される
- 給与(標準報酬)と加入期間によって金額が変わる
老齢年金の月額目安(65歳受給開始・会社員・2026年度)
| 現役時代の 平均年収 |
加入20年 | 加入30年 | 加入40年 |
|---|---|---|---|
| 約300万円 | 月 約64,000円 | 月 約96,000円 | 月 約128,000円 |
| 約400万円 | 月 約71,000円 | 月 約107,000円 | 月 約143,000円 |
| 約500万円 | 月 約80,000円 | 月 約120,000円 | 月 約161,000円 |
| 約600万円 | 月 約90,000円 | 月 約135,000円 | 月 約181,000円 |
※ 老齢基礎年金(満額847,300円/年)と老齢厚生年金の合計の目安です。老齢基礎年金は40年加入で満額、20年・30年加入は比例減算。自営業・フリーランスは老齢基礎年金のみとなります。実際の受給額は収入の変動・納付状況・繰上げ・繰下げ等によって異なります。
失業したとき(雇用保険)
会社員が失業した場合、雇用保険から「基本手当(失業給付)」を受け取ることができます。
支給額は離職前の賃金日額の50〜80%程度で、支給期間は年齢・加入期間・離職理由によって90〜360日と幅があります。
また、会社都合の離職では自己都合よりも支給が手厚くなる場合があります。
会社員と自営業、フリーランス、主婦では保障内容が異なる

公的保険の保障内容は、働き方によって大きく変わります。
特に自営業・フリーランスの方は、会社員に比べて保障が薄い部分があるため注意が必要です。
自営業・フリーランス・主婦は会社員に比べて公的保険が少ない
会社員は健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の4つに加入しています。さらに、保険料を会社と折半で負担するため、負担額も抑えられています。
一方、自営業・フリーランスは国民健康保険と国民年金のみで、雇用保険・労災保険はありません。保険料もすべて自己負担です。
主婦(第3号被保険者)は、配偶者の扶養に入ることで自分では保険料を負担せずに国民年金に加入できますが、傷病手当金や雇用保険などの保障はありません。
主な違い比較表
| 保障の種類 | 会社員 | 自営業・フリーランス | 主婦(扶養内) |
|---|---|---|---|
| 傷病手当金 (病気・ケガで働けないとき) | ○ 給与の約2/3・最大1年6ヶ月 | × なし | × なし |
| 出産手当金 | ○ 給与の約2/3・最大98日 | × なし | × なし |
| 老後の年金 | ○ 基礎年金+厚生年金 | △ 基礎年金のみ | △ 基礎年金のみ |
| 遺族年金 | ○ 基礎年金+厚生年金 | △ 基礎年金のみ | ○ 配偶者分の基礎+厚生年金 |
| 障害年金 | ○ 基礎年金+厚生年金 | △ 基礎年金のみ | △ 基礎年金のみ |
| 雇用保険 (失業給付) | ○ 90〜360日支給 | × なし | × なし |

自営業・フリーランスの方は、会社員と比べて公的保険のカバーが薄い部分があります。その分、民間保険で備える必要性がより高くなります。
民間保険は「足りない部分をカバーする役割」の認識で無駄を減らす

公的保険の内容を知ると、「思ったより保障が手厚い」と感じる方も多いと思います。
民間保険の基本的な役割は、公的保険や貯蓄でカバーしきれない部分を補うことです。この考え方を持つだけで、必要以上の保険に入るリスクを大きく下げられます。
足りない部分の考え方
病気やケガ
高額療養費制度で医療費の自己負担には上限がありますが、入院中の食事代・差額ベッド代・仕事を休んだ期間の収入減は対象外です。
会社員は傷病手当金がありますが、自営業・フリーランスの方には対応する給付がないため、医療保険や所得補償保険(働けない期間の収入をカバーする保険)を検討する意味があります。
亡くなったとき
家計を支える方が亡くなった場合、遺族年金でカバーされます。ただし、子どものいない自営業・フリーランスの場合、遺族年金は受け取れません(子がいない配偶者への遺族基礎年金はなく、遺族厚生年金も対象外のため)。民間の死亡保険の必要性が特に高くなります。
介護
介護保険で自己負担は1〜3割に抑えられますが、介護が長期化すると累計費用は大きくなります。施設入所の場合は食費・居住費が別途かかるため、長期的な備えとして民間の介護保険を検討する方も少なくありません。
老後の年金
自営業・フリーランスの方は老齢厚生年金がないため、老後の収入は会社員より少なくなる傾向があります。iDeCo(個人型確定拠出年金)や個人年金保険で老後に備える意識を持つことが大切です。
民間保険が存在しない分野もある
保険を考えるうえで、「民間保険でカバーできない分野もある」ということも知っておきましょう。

民間保険を選ぶ際は、まず公的保険でどこまでカバーできるかを確認することが大切です。そのうえで足りない部分だけを補う考え方が、無駄な保険料を払わないコツです。
公的保険は改定される!定期的な保険の見直しは大切

公的保険は、一度決まったらずっと変わらないわけではありません。社会情勢や財政状況に応じて、定期的に見直しが行われています。
改定は良し悪しどちらもある
改定によって保障が手厚くなることもあれば、給付が減ったり自己負担が増えたりすることもあります。
公的保険の内容が変われば、民間保険で備える必要性が変わる可能性があります。そのため、公的保険の改定には注意しておく必要があります。
最近の公的保険 改定・改悪の動向
近年、特に注目されている改定・改悪の動向を紹介します。
高額療養費制度は、2026年8月の診療分から自己負担の上限額が引き上げられます。
2026年度の予算が成立し、実施が確定しています。
今回の見直しのポイントは4つです。
- 月ごとの上限額が全区分で引き上げ(年収約370万〜770万円なら月80,100円→85,800円)
- 「年間上限」の新設(毎年8月〜翌7月の自己負担の合計が上限に達すると、それ以上の負担なし)
- 多数回該当(直近12か月で3回以上上限に達すると4回目から上限が下がる仕組み)は据え置き
- 2027年8月に所得区分を細分化して、さらに引き上げ(第2段階)。年収200万円未満の方は、多数回該当の上限額が引き下げられ、負担が軽くなります
共働き世帯の場合、上限額は世帯年収ではなく、お一人ずつの年収で決まります。
年収370万〜770万円の方で月5,700円、770万円を超える方で月11,700円ほど負担が増える場合があります。
一方で、治療が長く続く方は「年間上限」ができたことで、これまでより負担が抑えられるケースもあります。
※細かな金額や運用は、今後の政令などで変わる場合があります。
- 遺族厚生年金の有期化(2028年4月から段階的に施行)
子のいない配偶者への遺族厚生年金が、男女ともに5年の有期給付に変わります。これまで妻には終身で支給されていた部分が変わる改正です。 - 後期高齢者医療の窓口負担2割への引き上げ(2022年10月〜)
一定以上の収入がある75歳以上の方の医療費窓口負担が、1割から2割に引き上げられました。
遺族厚生年金の改正内容と受け取れる金額の目安は、遺族年金はいくら?共働き夫婦が夫・妻別に知る金額と2028年改正でくわしく解説しています。

どのような見直しが必要になるか
公的保険の改定があった場合、民間保険の見直しが必要になるケースがあります。改定内容に応じた見直しの方向性は以下のとおりです。
- 高額療養費の上限が引き上げられた → 医療費の自己負担増に備えて、医療保険の給付内容を確認する
- 遺族年金の支給内容が変わった → 死亡保険の必要保障額を見直す
- 年金支給額が変わった → 老後の資産形成の計画を見直す

公的保険の改定はニュースになることもありますが、見落としてしまうことも多いです。定期的に保険を見直す際は、公的保険の内容も一緒に確認するクセをつけておくといいかもしれません。
まとめ:公的保険を知ることが、無駄のない保険選びの第一歩

ここまで、7つの公的保険の種類と役割について解説してきました。
要点をまとめると、次の4つです。
- 公的保険は病気・出産・死亡・障害・介護・年金・失業の7つのリスクに備えられる
- 会社員と自営業・フリーランスでは、保障内容が大きく異なる
- 民間保険は公的保険や貯蓄でカバーしきれない部分を補う役割が基本
- 公的保険は改定されるため、定期的な見直しが大切
民間保険を考える前に、まず公的保険でどこまで備えられるかを知ることが大切です。
公的保険の内容を理解したうえで民間保険を選ぶことで、必要以上の保険に入るリスクを減らし、無駄な保険料を抑えやすくなります。

公的保険を知ることが、無駄のない保険選びの第一歩です。ぜひ参考にしてみてください。
公的保険の全体像がつかめたら、次のステップは「引き算」です。
死亡保障なら、まず国からいくら出るかを【遺族年金はいくら?共働き夫婦が夫・妻別に知る金額と2028年改正】で確認してみてください。

次に、貯蓄でどこまでカバーできるかを【生活防衛資金はいくら必要?共働き世帯の目安と、貯蓄で減らせる保険】で整理します。

2つを引いた「残り」の計算方法は【必要保障額の計算方法|共働きが”引き算”で出す死亡保険の目安】で解説しています。


